3分でわかる|GDP成長率の正しい見方|前期比、季節調整、実質・名目とは?|2020年11月22日

GDP成長率は、次の操作で、大きな振れ幅に見える。
◆年率換算

また ◆前年比ではなく前期比 ◆季節調整 
この余計な操作で、さらに、わからなくなる。

政府も、伝えるメディアや各総研も、その方法で伝える中、
消費者経済総研は、3分で簡単にGDPをわかりやすく解説



消費者経済総研は、チーフ・コンサルタントの松田優幸を筆頭に、
消費・商業・経済の評論家・専門家として、
わかりやすい解説をお伝えしています。


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初稿:2020年11月14日、11月22日最新更新
     本ページは、修正・加筆等で、上書き更新されていく場合があります。

ご注意
このテーマに関連し、なにがしかの判断をなさる際は、自らの責任において十分にかつ慎重に検証の上、
対応して下さい。また「免責事項」をお読みください
はじめに
本件のテーマに関連する内容は、奥が深く複雑です。
正確さを追求しますと、複雑化し、わかりにくくなります。

「3分でわかるシリーズ」では、わかりやすさを優先しています。
よって、単純化・省略化等をしている箇所があります。


7-9月期のGDPが、2020/11/16 発表
7~9月期の発表

GDPの2020年7-9月期(1次速報) が、2020年11月16日に発表されました。
現状はコロナ禍で、経済は大きく傷んでいて、GDPは注目されています。

その「7-9月期」の実質GDP成長率は、前期比年率プラス21.4%と、発表されました。
プラス21%? 早くも、経済が大幅に、回復した?」と思われるかもしれません。

   → それは、勘違いです。


4~6月期は?

前の期の「4-6月期」の実質GDP成長率(2次速報)は、前期比年率マイナス28.1%でした。
「マイナス28%? 3割弱も、経済が落ちたのか?!」と、思われるかもしれません。

   → それは、勘違いです。


4-6月マイナス28% → 7-9月プラス21%と 激変?

   → これも違います。

GDP統計は、下記の操作によって、大きな数字に見えるのです。
「年率換算で、四半期(3か月分)を、1年分に直す」

さらに「前年比ではなく、前期比で見る」や「季節調整をする」
という余計な操作によって、わからなくなります。

発表主体の政府(内閣府)も、伝えるメディアの方々や、各総研も、その方法で伝えています。
そこで、消費者経済総研は、GDPを簡単に、わかりやすく把握できる方法で、お伝えします。


GDP とは ?
◆注目の経済指標の GDP とは?

大手の機関投資家の金融トレーダー達に「注目重要指標 とは ?」とアンケートをとると、
日銀短観と共に、GDPは、1位か2位になることが、多いです。

 ※日銀短観とは、過去号「3分でわかる|注目すべき景気指標 "日銀短観" 」を参照下さい。

筆者(松田)は、学生時代、慶応大学の経済学部で、経済を学びました。
GDPは、経済学の授業では、早い段階で登場し、経済の重要な指標です。

しかし、GDPの定義を、経済学的に説明すると、分かりにくくなるので、
ここでは、簡単に説明していきます。

日本のGDPを、一言で言うと「日本の経済活動の規模」です。


◆GDPの内訳とは?

「GDP」とは、簡単にいうと、下記の4つの金額を、足し算した合計の金額です。
 GDP=「個人消費」 + 「企業の設備投資」 + 「政府の支出」 + 「貿易」

内訳の割合は、ざっくりですが、下記のとおりです。
GDP(100%) =個人消費(約60%)+ 政府の支出・投資(約25%) + 企業の設備投資(約15%)

*貿易は?

「貿易」とは、「輸出」から「輸入」を差し引いた「純輸出」のことです。
 (「貿易・純輸出」=「輸出」 -「輸入」)

輸出輸入は、近年は同水準で推移し、「純輸出」は、近年は小さい額になっています。
GDPの構成比では、純輸出は1%未満で、大枠の内訳では、存在感がありません。



消費者経済総研の わかりやすい GDP とは ?
下記は、様々な操作をする前の「名目GDPの原データ」です。

青が去年で、赤は今年です。 薄い赤は、予測の仮置きの値です。

は、昨年同期比のパーセントです。


◆2020年 1-3 月は、136兆円で、昨年同期比 99.1% で、マイナス 0.9% です。

◆2020年 4-6 月は、126兆円で、昨年同期比 91.1% で、マイナス 8.9% です。

◆2020年 7-9 月は、130兆円で、昨年同期比 95.2% で、マイナス 4.8% です。

◆2020年10-12月は、140兆円で、昨年同期比 98.5% で、マイナス 1.5% です。

  ※10月以降は、予測の仮置きの値です。 ※出典:内閣府 国内総生産 四半期 名目 原系列


GDP報道と、消費者経済総研のGDP
報道では、

「4-6月期」の実質GDP成長率は、前期比年率 マイナス 28.1% で、
「7-9月期」の実質GDP成長率は、前期比年率 プ ラ ス 21.4% です。


消費者経済総研では、

「4-6月期」の名目GDP成長率は、昨年同期比 マイナス 8.9% で、
「7-9月期」の名目GDP成長率は、昨年同期比 マイナス 4.8%です。

*2019年の年間
 計554兆円(1~3月137兆円+4~6月138兆円+7~9月136兆円+10~12月142兆円)

*2020年の年間は、
 計532兆円(1~3月136兆円+4~6月126兆円+7~9月130兆円+10~12月140兆円)

*昨年比では、
 532兆円(2020年) ÷ 554兆円(2019年) = 96.0% → マイナス4.0% です。

一般のGDP報道より、この消費者経済総研の表現の方が、実態がわかりやすいのです。

 ※10月以降は、予測の仮置きの値です。


様々な操作 とは ?
操作という言葉を使いましたが、小細工しているという意味ではなく、計算過程での調整です。

◆ 「四半期(3か月分)を、1年分に直す」(年率換算)

4-6月期は、前期比は、マイナス7.9%で、前期比年率換算では、マイナス28.1%でした。
4~6月の3か月を、わざわざ、4倍して、年率(12か月分)に直す意味は、ありません。

3か月分を12か月分にするのは、4倍にすることなので、3か月分の7.9%を4倍にしてみます。
7.9%×4=31.6%です。しかし、発表された値は、28.1%です。

3.5ポイント(= 31.6 - 28.1)で、1.12倍(= 31.6% ÷ 28.1%)ものズレがあります。
ここでも、ズレがあり、調整が入っています。


◆「季節調整をする」

1-3月、4-6月、7-9月、10-12月の4つの期の中では、10-12月が、大きな額になります。
10-12月は、GDPの約6割を占める個人消費が、年末に活発になる等の理由からです。

「季節調整」によって、そのような季節要因変動を排除し、調整しているのです。
季節調整により、1-3月、4-6月、7-9月、10-12月の4つの期が、ほぼ同じ水準の額になります。


◆「前年比ではなく、前期比で見る」

上記のように、季節要因変動があるなら、
わざわざ、違う季節の「当期」と「前期」で、比較しなければよいのです。

店舗や商業施設の売上指標は、当然「昨対(サクタイ)」です。
昨対とは、昨年同月比や、昨年同期比の事です。

12月は、12か月間のうち、最大売上の月になることが、多いです。
なので、1月を前月(12月)と比較すれば、1月は下がるに決まっているのです。

なお、中国のGDPは、前期比ではなく、前年同期比で発表され、報道されています。
勘違いを招くので、日本のGDPも「前期比」ではなく「前年同期比」で見るのが良いのです。

以上、「GDPは、前年同期比で、見ましょう」でした。


詳細・補足 編
上記までが、3分でわかるシリーズです。
ここから先は、少々ややこしいので、補足編としました。

◆名目GDPと、実質GDP とは ?

名目値とは、実際に市場で、取り引きされている価格に基づいて、推計された値で、
実質値とは、ある年(参照年)からの物価の上昇・下落分を、取り除いた値です。

名目値では、インフレの影響を受けて、実態よりも、高めになることが多かったため、
GDP成長率では、インフレを除いた実質値で、見ることが多っかたのです。

「名目」から、インフレ率を割り引いたのが、「実質」です。
GDPの計算では、そのインフレ率に相当するのが、「デフレータ」と呼ばれる指数です。

実質GDP = 名目GDP ÷ デフレーター です。
なお、GDPデフレータとCPIは、違います。デフレータの詳細は、下段に記載しています。

◆名目のほうが、近年は、実感に近い。

さて、日本も高度成長時代は、インフレ率が高かったのです。
1974年は、総合卸売物価は31.4%上昇し、消費者物価指数は23.2%上昇しました。

昭和の高成長や高インフレの時代では、GDPは、実質で見た方が、実態をとらえやすいのです。
仮に、実質GDPの水準が、昨年も100で、今年も100で、横ばいだとします。

横ばいで成長していないのに、20のインフレによって「名目GDPが120」になったとします。
この場合は、20のインフレ部分を除いたほうが、経済成長の実態を見ることができます。

近年は、昭和ほどのインフレ水準にないので、名目を実質に直すメリットは、小さくなってます。

名目は、実際のお金の流れ、つまり企業の入出金の実際の額や、個人消費の実際の額がベースに
なっているので、肌感覚での経済規模は、実質よりも名目の方が、近いのです。

2020年1~9月のGDPは、名目は391,450で、実質は377,338です。(単位:十億円)
名目÷実質で計算すると104%ですが、4%ものインフレは、肌感覚とは離れますよね。

なお、2017年、2018年、2019年のデフレータは、いずれも103%です。


◆「消費者物価指数」「企業物価指数」 とは ?

「消費者物価指数」は、消費者が、購入するモノ・サービスを対象としたインフレ指数です。
「企業物価指数」は、企業間で取引される商品を、対象としたインフレ指数です。


◆GDPデフレータ とは ?

消費者物価指数は、家計消費が対象で、企業物価指数は、企業間取引が対象でした。
GDPデフレーターは、家計消費の動向、企業設備投資の動向も踏まえた総合的な物価指標です。

GDPデフレータは、企業物価指数、消費者物価指数などを単純に包括した値ではありませんが
概念的には包括していると理解できます。


◆GDPデフレータは、事後的な指数

先に、GDPデフレータがあって、「名目GDP ÷ デフレーター = 実質GDP」ではありません。
GDPデフレータは、事後的計算によって得られた指数です。

ちなみに、事後的に算出することを、インプリシット方式と言います。


※参考出典:「日銀レビュー 金融政策の説明に使われている物価指数」

GDP デフレータは、
国内の経済活動全体の名目付加価値と、実質付加価値の関係を表示する用途で作成されている。

これは価格を直接調査するものではなく、加工によって得られる指数である。

具体的な作成方法をみると、
まず、品目毎の名目生産額を積み上げて、名目国内総生産額を算出する。

次に、品目毎の名目生産額を、対応する物価指数や関連の価格情報で、割ることによって、
品目毎の実質生産額を算出し、これを足し上げていくことで、実質国内総生産を算出する。

最後に、集計された名目国内総生産を、実質国内総生産で割ることによって
GDP デフレータを算出する。


【筆者プロフィール】
松田優幸が登壇のセミナーの様子
【松田 優幸 (消費者経済総研 チーフ・コンサルタント) 経歴】

*1986年
私立 武蔵高校 卒業

*1987年
慶応大学 経済学部 入学

経済学部で、
・マクロ経済学(GDP・失業率・インフレーション・投資・貿易収支等)
・ミクロ経済学(家計・消費者、企業・生産者、取引市場等)・労働経済学を専攻
 経済学科「高山研究室」にて、貿易経済学・環境経済学を研究

*1991年
慶応大学 卒業  東急不動産(株) 入社

*1997年
親会社の東急電鉄(株)へ逆出向
消費の現場である商業施設と街づくりの計画担当

*2000年
東急不動産 復職
各種の商業施設の企画開発・運営、接客等で消費の現場の最前線に立つ。

*2005年
東急不動産から、消費・商業・経済のコンサルティングをおこなう
株式会社 リテール エステートへ移籍し14年間、

全国の消費の現場を視察・調査。その数は多岐にわたる。

*現 在
消費者経済総研 チーフ・コンサルタント
兼 リテール エステート リテール事業部長 (52歳)

*資 格
 ・ファイナンシャル・プランナー
 ・宅地建物取引士資格者
 ・不動産コンサルティング技能登録者(新制度更新前まで)
 ・簿記3級


【消費者経済総研について】

■研究所概要
名称  : 消費者経済総研
所在地 : 東京都新宿区新宿6-29-20
事業内容: 消費・商業・経済の、調査・分析・予測のシンクタンク
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チーフ・コンサルタント 松田優幸   経歴のページはこちら