日銀短観とは|最新はいつ公表?DIの見方や意味は?消費者経済総研|2021年7月9日
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- ■ 目次
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- ■日銀短観とは?
- ■「日銀短観」が注目の理由とは?
- ■最新の日銀短観の結果 とは?
- ■大企業・製造業に注目の理由 とは?
- ■過去の消費増税では、どうなった?
- ■リーマン・ショックの時、短観は?
- ■短観のアンケート対象とは?
- ■アンケートの質問内容とは?
- ■大項目1の「判断項目」の中の13の質問とは?
- ■日銀短観とは?
- ■ 日銀短観とは?
- ~この項で「日銀短観とは」を、3分で解説~
日銀短観とはを、先に簡単に答え(結論)を言うと、
「今の景気・今後の景気などが、良いか悪いかを、
企業が、日銀へ答えたアンケート結果」だ。
◆「業況DI」とは?
業況DIとは、
「景気が良いとの回答割合」から
「景気が悪いとの回答割合」を
引いた値だ。
短観の正式名称とは、
「全国企業短期経済観測調査」である。
末尾に「調査」とあるが、調査主体は日本銀行だ。
「調査」の前には「経済観測」とあり、経済・景気を
観測(把握)する指標として、注目されている。
調査対象は、
資本金2千万円以上の民間企業だ。
日銀発表のデータだから、難しい内容なのか?
そうではない。とてもシンプルな調査だ。
※なお「DI」とは、Diffusion Index
(ディフュージョン インデックス)の略。
「Diffusion」とは、「拡散」を意味する。
転じて「業況の拡大」を指す。
「Index」とは、「指数」のこと。
DIは「業況の拡大具合の指数」と読めるが、
言葉の由来から追求すると、わかりにくくなる。
よって「業況DI」とは、
簡単には「業況指数」だと、とらえればよい。
「業況」とは「景気の状況」のことだ。
結論として「業況DI」は「景気指数」である。
◆最新の日銀短観は、いつ公表?
最新は2021年6月分で、同年7月1日公表された。
この調査の回収基準日は、6 月11 日だった。
日銀短観は、3か月ごとに、公表される。
次回は2021年9月分を、同年10月初頭公表予定。
◆短観のアンケート項目の内容とは?
日銀短観には、様々な質問項目がある。
中でも、世間が、一番注目する項目が「業況」だ。
既述の通り「業況」は「景気の状況」だ。
調査表(アンケート用紙)に、下記の質問がある。
---------------
貴社の業況
1.良い
2.さほど良くない
3.悪い
---------------
3つの選択肢から、1つを選んで回答する。
「貴社の景気の状況は、3つのうちどれか?」
ということだ。
回答欄は、2つある。
「最近」についてと「先行き」についてである。
◆アンケートの集計結果は?
「良い」と答えた構成比から
「悪い」と答えた構成比を、引いて算出する。
例えば、「業況」について
「良い」が、60%
「さほど良くない」が、25%
「悪い」が、15%
この場合は、45が指数となる。
(= 良い60 - 悪い15)
この引き算された値を「業況判断DI」という。
上記のケースでは
「日銀短観の業況判断DIは、45」である。
◆対象の「業種・規模・時点」とは?
*業種は?
調査の対象の業種は、
「製造業」と「非製造業」の2つに分かれる。
*規模は?
企業規模は、次の3つに分かれる。
「大企業」 「中堅企業」 「中小企業」
*時点は?
「最近」と「先行き」の2つの時点を、回答する。
「先行き」とは、今後3か月までの間の変化予測だ。
日銀の調査表には、次の文言が記載されている。
----------------------
「最近」欄には
3か月前と比べた調査表記入時点の変化、
また「先行き」欄には
今後3か月までの間に、どのように変化するかに
ついてのご判断をご記入ください。
(改行は筆者が挿入)
----------------------
例えば、
「わが社の商売は、最近は、ぱっとしない。
でも、3か月後は、良くなっているだろう」
というような場合は、
・「最近」の回答欄 → 「さほど良くない」
・「先行き」の回答欄 → 「良い」
という回答となるだろう。
- ■ 「日銀短観」に注目の理由とは?
- ~結論を先に言うと、「日銀短観」が注目
される理由は、株価予測に役立つから~
「日銀短観は、株価の予測に、大変参考になる指標」
と言われることも多い。
筆者(松田)の知人で、機関投資家で働く人も多い。
メガバンクの株式トレーダーもいるし、
大手保険会社の債券トレーダーなど、様々いる。
以前、この業種の知人たちは、
「日銀短観」は、最も重視する指標と言っていた。
その理由は何か?
様々な投資家が、株式等の売買をしている。
売買するには、様々なデータを参考にする。
GDPは、経済全体の値である。
しかし、過去のデータである。
例えば、2021年4-6月期の1次速報は、いつか?
8月16日公表予定だ。
公表されても、過去のデータである。
「株は、半年先~1年先の状況を織り込んでいく」
と言われる。
つまり、株の売買では、先をよまないといけない。
日銀短観には、3か月後の予測も入っている。
先よみをする金融トレーダーには、
日銀短観が重要なのだ。
- ■ 最新の日銀短観の結果 とは?
- 日銀短観の21年6月分が、7月1日に公表された。
これが、現時点の最新の日銀短観である。
◆最近の業況は?<大企業>
大企業・製造業は +14 (9ポイント上昇)
大企業・非製造業は + 1 (2ポイント上昇)
※点線の先の13ポイント、3ポイントは、
3か月後の「先行き」の値。
◆最近の業況は?<中小企業>
中小企業・製造業は -7 (6ポイント上昇)
中小企業・非製造業は -9 (2ポイント上昇)
※点線の先のポイント(13,3,-6,-12)は、
3か月後の「先行き」の値。
※出典:日本銀行|主要時系列統計データ表
4分類とも、コロナ禍で、マイナス圏に沈んだ。
*大企業は、どうか?
製造業は2021年3月に、非製造業は2021年6月に
プラス圏に浮上している。
*中小企業は、どうか?
製造業も非製造業も、改善傾向にあるものの、
いまだ、マイナス圏にある。
*製造業と非製造業での違い とは?
大企業も中小企業も、
非製造業より、製造業が、上にある。
海外経済の復活は、日本の製造業には追い風だ。
非製造業には、対面のサービス業も含まれる。
やはりコロナ禍の影響を、受け続けている。
◆3カ月後の先行き判断は?
・大企業・製造業は +13 (1ポイント悪化)
・大企業・非製造業は +3 (2ポイント上昇)
・中小企業・製造業は -6 (1ポイント上昇)
・中小企業・非製造業は -12 (3ポイント悪化)
中小企業・非製造業は、3ポイント悪化で、
コロナ禍の中、まだ見通しは明るくない。
- ■大企業・製造業に注目の理由とは?
- 上述の通り、短観には複数の「規模・業種」がある。
しかし「大企業 製造業」が報道されることが多い。
その理由は何か?
「今まで、皆がそうしてきたから」
という、単純な理由を言う人もいる。
しかし、元をたどれば、どうか?
「日本の上場企業には大企業 製造業が多いから」
これが理由だと、言われている。
上場企業は、上場しているので頻繁に売買される。
その売買対象(投資対象)の上場企業は、
日本では、製造業が多い。
よって、株式投資に関係が多い大企業・製造業の
項目に、関心が集まるのだ。
- ■過去の消費増税では、どうなった?
- ◆1997年の増税では?
1997年4月の消費増税(3→5%)では、どうか?
消費増税をきっかけに、大きく下落している。
その増税の前までは、短観は上昇トレンドだった。
1997年の消費増税で、下落トレンドへ転落する。
◆2014年の増税では?
2014年4月の消費増税(5→8%)ではどうか?
ここでも短観の指数は低迷する。
しかし1997年ほどでは、ない。
海外経済が良かったので、影響は小さめだった。
- ■ リーマン・ショックの時、短観は?
- リーマン・ショックでは、どうか?
短観は、大幅な下落をしている。
1997年の消費増税は、リーマン・ショックほど
では無いが、大きく下落している。
- ■■ -ここから「詳細編」です-■■
- ■ 短観のアンケート対象とは?
- アンケートに回答する人は、
「民間企業」の社長などの代表者※だ。
※代表者から権限を委譲された人でもよい
日銀短観の対象の「民間企業」とは、
全国の資本金2千万円以上の民間企業だ。
対象社数は、2019年3月分では、9,830社もある。
(その他に金融機関210社)
31の業種を対象としている。
(製造業:17業種 + 非製造業:14業種)
そして3つの規模(大企業、中堅企業、中小企業)の
計93層になる。
なお、 回答率は、99.0%と高い回答率だ。
- ■ アンケートの質問内容とは?
- 質問の大項目は、5件ある。
◆大項目1とは
大項目1は、「判断項目」である。
「良い・悪い」や「多い・少ない」等を、
自社が、判断して記入する。
「大項目1」の中には、小項目が13件ある。
13のうち一番最初の質問は「業況」についてだ。
一番注目される回答は、この「業況」であり、
アンケート用紙でも、一番最初に登場する。
小項目13件のうち、残りの12件は、後述する。
◆大項目2とは
大項目2は、「年度計画」である。
自社の売上・損益等の数字を記入し、回答する。
売上・損益等は、「前期の実績」と、「当期の予想」だ。
さらに内訳の「営業利益、経常利益、設備投資額」等
の金額を記入する。
◆大項目3とは?
大項目3は、「物価見通し」である。
1つ目は、自社の販売価格の見通し。
自社の販売価格が、1年後・3年後・5年後に、
「どのくらい、上下しそうか」の予想を回答する。
2つ目は、物価全般の見通し。
消費者物価は、1年後・3年後・5年後は
「どのくらい、上下しそうか」の予想を回答する。
◆大項目4とは?
大項目4は、「新卒者採用状況」である。
新卒採用者数の実績と予測の人数を回答する。
◆大項目5とは?
大項目5は、「海外関連項目」である。
海外での売上高や設備投資額の金額を回答する。
- ■大項目1の中の13の質問とは?
- ◆質問1-(1) 「貴社の業況」
一番最初は、既述の通り「貴社の業況」
~続いて2つ目の質問は?~
◆質問1-(2)
「貴業界の国内での製商品・サービス需給」
自社が属する業界の国内の「需給」について
次の3つの選択肢の中から選ぶ。
「需要超過」
「ほぼ均衡」
「供給超過」
~質問3~6は省略で、7つ目の質問は?~
◆質問1-(7) 「貴社の雇用人員」
自社の「雇用人員の過不足」について、
次の3つの選択肢の中から選ぶ。
「過剰」
「適正」
「不足」
◆質問1-(8) 「貴社の資金繰り」
自社の総合した「資金繰り」について、
次の3つの選択肢の中から選ぶ。
「楽である」
「さほど苦しくない」
「苦しい」
(「最近の状況」のみを回答)
◆大項目1の13の質問の残りは?
その他には、下記等の質問がある。
・海外での商品需給
・在庫水準
・業界の流通在庫水準
・設備の過不足
・金融機関の貸出態度
・借入金利水準
・CPの発行環境
・販売価格
・仕入価格
日銀短観・調査表(アンケート用紙)は、こちら。
- ■ 関連ページは?
- ◆景気を見るなら、GDPではなく、別指標で
■番組出演・執筆・講演等のご依頼は、 お電話・メールにてご連絡下さい。 ■ご注意 「○○の可能性が考えられる。」というフレーズが続くと、 読みづらくなるので、 「○○になる。」と簡略化もしています。 断定ではなく可能性の示唆である事を念頭に置いて下さい。 このテーマに関連し、なにがしかの判断をなさる際は、 自らの責任において十分にかつ慎重に検証の上、 対応して下さい。また「免責事項 」をお読みください。 ■引用 真っ暗なトンネルの中から出ようとするとき、 出口が見えないと大変不安です。 しかし「出口は1km先」などの情報があれば、 真っ暗なトンネルの中でも、希望の気持ちを持てます。 また、コロナ禍では、マイナスの情報が飛び交い、 過度に悲観してしまう人もいます。 不安で苦しんでいる人に、出口(アフターコロナ)という プラス情報も発信することで、 人々の笑顔に貢献したく思います。 つきましては、皆さまに、本ページの引用や、 URLの紹介などで、広めて頂くことを、歓迎いたします。 引用・転載の注意・条件をご覧下さい。 |
- 【著作者 プロフィール】
- ■松田 優幸 経歴
(消費者経済|チーフ・コンサルタント)
◆1986年 私立 武蔵高校 卒業
◆1991年 慶応大学 経済学部 卒業
*経済学部4年間で、下記を専攻
・マクロ経済学(GDP、失業率、物価、投資、貿易等)
・ミクロ経済学(家計、消費者、企業、生産者、市場)
・労働経済
*経済学科 高山研究室の2年間 にて、
・貿易経済学・環境経済学を研究
◆慶応大学を卒業後、東急不動産(株)、
東急(株)、(株)リテール エステートで勤務
*1991年、東急不動産に新卒入社し、
途中、親会社の東急(株)に、逆出向※
※親会社とは、広義・慣用句での親会社
*2005年、消費・商業・経済のコンサルティング
会社のリテールエステートに移籍
*東急グループでは、
消費経済の最前線である店舗・商業施設等を担当。
各種施設の企画開発・運営、店舗指導、接客等で、
消費の現場の最前線に立つ
*リテールエステートでは、
全国の消費経済の現場を調査・分析。
その数は、受託調査+自主調査で多岐にわたる。
商業コンサルとして、店舗企業・約5000社を、
リサーチ・分析したデータベースも構築
◆25年間の間「個人投資家」としても、活動中
株式の投資家として、
マクロ経済(金利、GDP、物価、貿易、為替)の分析や
ミクロ経済(企業動向、決算、市場)の分析にも、
注力している。
◆近年は、
消費・経済・商業・店舗・ヒットトレンド等で、
番組出演、執筆・寄稿、セミナー・講演で活動
◆現 在は、
消費者経済総研 チーフ・コンサルタント
兼、(株)リテール エステート リテール事業部長
◆資格は、
ファイナンシャル・プランナーほか
■当総研について
◆研究所概要
*名 称 : 消費者経済総研
*所在地 : 東京都新宿区新宿6-29-20
*代表者 : 松田優子
*U R L : http://retail-e.com/souken.html
*事業内容: 消費・商業・経済の、
調査・分析・予測のシンクタンク
◆会社概要
「消費者経済総研」は、
株式会社リテールエステート内の研究部署です。
従来の「(株)リテールエステート リテール事業部
消費者経済研究室」を分離・改称し設立
*会社名:株式会社リテールエステート
*所在地:東京都新宿区新宿6-29-20
*代表者:松田優子
*設立 :2000 年(平成12年)
*事業内容:商業・消費・経済のコンサルティング
■松田優幸が登壇のセミナーの様子
- ご案内・ご注意事項
- *消費者経済総研のサイト内の
情報の無断転載は禁止です。
*NET上へ「引用掲載」する場合は、
①出典明記
②当総研サイトの「該当ページに、リンク」を貼る。
上記の①②の2つを同時に満たす場合は、
事前許可も事後連絡も不要で、引用できます。
①②を同時に満たせば、引用する
文字数・情報量の制限は、特にありません。
(もっと言いますと、
①②を同時に満したうえで、拡散は歓迎です)
*テレビ局等のメディアの方は、
取材対応での情報提供となりますので、
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(★をアットマークに変えて下さい)
電 話: 03-3462-7997
(離席中が続く場合は、メール活用願います)
- チーフ・コンサルタント 松田優幸
- 松田優幸の経歴のページは「概要・経歴」をご覧下さい。