3分でわかる|中身は悪い?GDP|2019年1~3月期速報(2019年5月20日)|消費者経済総研|
消費・設備投資・輸出 が 減少 しかし、輸入が減ったことで【2.1%成長】した謎とは? ~3分でわかるGDPの中身 わかりやすく解説します~ 消費と経済を科学する「消費者 経済 総研」 (東京都新宿区、代表:松田 幸治)は、 2019年5月20日(月)に、内閣府から発表された GDP 2019年1~3月期(1次速報)の中身を分析し、その内容を発表します。 同GDP成長率(季節調整済 前期比)は、実質で0.5%(年率2.1%)で、 名目GDPの成長率は、0.8%(年率3.3%)となりました。 良い数字に見えますが、中身を見ると、どうでしょう? 「消費・設備投資・輸出が、減少」したのに、 「輸入が減少したので、成長」の謎 とは? について発表します。 ------------------------------ 本ページは、修正・加筆等で、上書き更新されていきます。 *初稿:2019年5月20日 *2稿:2019年6月11日 |
■【先立って、結論】■ ~今回のGDP拡大は、輸入減少が原因だった~ |
*GDPの内訳とは? 「GDP」とは、簡単にいうと 「個人消費」 + 「企業の設備投資」 + 「政府の支出」 + 「貿易」です。 この4つの金額を、足し算した合計の金額です。 *貿易とは? 「貿易」とは、「輸出」から「輸入」を差し引いた「純輸出」のことです。 ( 「貿易・純輸出」=「輸出」 -「輸入」) *輸出は? 「輸出」が増えると、「純輸出(貿易)」が増えるので、「GDP」が増えます。 *輸入は? 今度は「輸出」ではなく「輸入」に注目です。 「輸入」が増えると「純輸出(貿易)」が減り、GDPが減ります。 逆に、「輸入」が減ると「純輸出(貿易)」が増え、GDPが増えます。 つまり、「輸入減少」で「GDPが拡大」する、という計算式になっています。 日本の景気が冷えれば、輸入が減ります。 しかし、GDP計算上は、輸入が減ると、GDPは拡大です。 GDPは、こういう計算式になっているので、しょうがない話しなのです。 今回は、「輸入」が減った上に、 「個人消費」「企業の設備投資」「輸出」の景気のメイン・エンジン3兄弟も、 今回は、減少です。 それでも、GDP(1~3月期)は、実質年率2.1%成長という結果になります。 これが、世の中で、「中身は悪い?」と言われるゆえんです。 |
~以上が、「先立って、結論」ですが、この後、各項目を解説していきます~ |
■【 GDPの内訳とは? 】 GDP内訳・簡単編では、 「個人消費」 + 「企業の設備投資」 + 「政府の支出」 + 「貿易」でした。 それを正確な言葉にすると、下記となります。 GDP = ①「民間最終消費支出」+「民間住宅」 + ②「民間企業設備」+「民間在庫変動」 + ③「政府最終消費支出」+「公的固定資本形成」+「公的在庫変動」 + ④「純輸出」 「内訳・簡単編」での言葉を当てはめると、下記となります。 ①「個人消費」 =「民間最終消費支出」+「民間住宅」 ②「企業の設備投資」=「民間企業設備」+「民間在庫変動」 ③「政府の支出」 =「政府最終消費支出」+「公的固定資本形成」+「公的在庫変動」 ④「貿易」 =「純輸出」 「GDPのメイン・エンジンは、” 個人消費 ” であり、GDPの約6割を占める。」 と言われます。ここでは、「民間最終消費支出」+「民間住宅」が、それに該当します。 ■【くせ者の「純輸出】とは?】 最後の「純輸出」が、くせ者です。なお、「純輸出」=「輸出」-「輸入」です。 「輸出」が増えると、「純輸出」が増えます。「純輸出」が増えるとGDPが増えます。 逆に「輸入」が増えると、「純輸出」が減ります。「純輸出」が減るとGDPが減ります。 その逆は、「輸入」が減ると、GDPが増えることになります。 「輸入が減ると、GDPは成長」です。 ■【GDPの成長のために、輸入を減らす?】 「GDPの成長のためには、輸入を減らした方が良い。」ということになってしまいます。 はたして、そうでしょうか? 原油や、液化天然ガス、衣類、通信機をはじめとして、様々、日本は輸入しています。 これらの輸入を減らすと、生産の原材料が減って、生産は低下しそうです。 衣類の輸入が減れば、衣類の消費の低下につながりそうです。 ■【GDP統計の性格】 他にも、謎めいた要素があります。それは「民間在庫変動」です。 これは「在庫投資」と言われることも多いです。 筆者は30年以上前に、慶応大学の経済学部に入学しました。 早い段階でマクロ経済学で「GDP」を学びます。 「在庫が増えると、GDPが成長?」 「売れ残りが増えて在庫が増えると、成長 とは何事?」 という素朴な感想を持ちました。 「売れ残って、在庫が増えた」ではなく、 「将来売るための商品を、早めに生産した。つまり先行投資だ」 というようにGDP統計では考えるのです。 GDP統計は、過去からの連続的な比較をする指標でもあります。 世界格国の経済規模を比較する指標でもあります。 つまり、簡単に、中身の構成を変えるわけにもいきません。 ひとつの国の「経済規模を見る指標」にはなりますが、 「景気の良い・悪い」をダイレクトに示す指標とは言い切れません。 そこで、景気の良し悪しの指標として「景気動向指数」や「日銀短観」があります。 こちらを見ると、「景気」についてよくわかります。 「3分でわかる|景気を見るなら、GDPではなく、別指標で」もご覧下さい。 ■【今回のGDPプラス成長の貢献順位は?】 今回のGDPの年換算の成長率は、実質は2.1%で、名目は、3.3%ですが、 実質ベースで計算すると開差等の差がでるので、数字があう「名目」ベースで見てみます。 (季節調整系列) 前期(2018年10~12月)と当期(2019年1~3月期)で、どれだけ伸びたかを見ます。 GDPを構成する要素別に見ます。 年換算でのGDPの成長額は、4.5兆円です。 (2018年10~12月期549.5兆円→2019年1~3月期は554.0兆円で、 増加額は、4.5兆円です。) 続いて、GDP増加額の内訳を、貢献額の多い順に並べました。 なお、先述のとおり、「輸入が減ると、GDPが増える」です。 「輸入」は8.2兆円ほど「減少」しました。 言い換えて「輸入減少」が、8.2兆円「増加」です。 その他、「民間在庫変動」は0.6兆円増加、「公的固定資本形成」は0.5兆円、 「民間住宅」は0.2兆円、「政府最終消費支出」は0.2兆円、「公的在庫変動」は0.0兆円です。 ここまで、増加項目でプラス貢献です。 マイナスは、 「民間最終消費支出」が-0.7兆円、「民間企業設備」が-0.9兆円、「輸出」が-3.6兆円です。 仮に「輸入」の増減が無い場合は、GDPは、3.7兆円のマイナス成長となります。 (下表参考) |
■【景気のエンジンは、どうなった?】 「民間最終消費支出」「民間企業設備」「輸出」つまり、「消費・設備投資・輸出」という景気のメインエンジン3兄弟が、マイナスです。 これが、世の中で、「中身は悪い?」と言われるゆえんです。 ■【 3分でわかるシリーズ 開設の動機 】 チーフ・コンサルタントの松田優幸は、1987年に慶應義塾大学の経済学部に入学して、 4年間、マクロ経済学を始めとした各経済学を研究していました。 研究し始めの時の感想は「経済学の論文や文献は、よくわからない」でした。 その後、理解が進んだ後には 「よくわかった。しかしなんで、わざわざ、わかりにくい表現をするのか?」 との感想を持ちました。 昨今の世の中に登場する解説でも「わかりにくい」表現は、いまだ少なくない、 と感じています。 そこで「3分でわかるシリーズ」を展開することで、 多くの方々に「わかりやすく」お伝えしていく考えです。 |
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