消費税|減税の効果・メリット,増税の影響・デメリットを評論家が理由を簡単解説|消費者経済総研|2021年8月31日
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- ■東京新聞|松田優幸の記事掲載
準全国紙の 東京新聞(2020年6月30日)から、
筆者(松田)が、取材を受け、
消費税の減税に関する内容が掲載されました。
- ■過去の増税のダメージは?
- ◆消費税で、損するのは誰?
「そもそもとして、消費税で、誰が、損をする?」
これは、誤解してる人が、意外に多いので、
この点は、本ページの最後に解説してある。
消費税は、消費者が負担する。
企業は、負担者ではない。※
誤解の原因は、企業も、物品購入のときに
「本体価格+消費税」を、支払っているからだ。
消費税では、一般消費者の財布が、痛むのだ。
(詳細解説は、本ページ最後の項を参照)
◆過去の3回の増税は、いつ?
消費税は、下記のように3回増税された。
1回目:1997年4月(3→5%)
2回目:2014年4月(5→8%)
3回目:2019年10月(8→10%)
-- 消費者 経済 総研 --
◆過去の消費税の増税では、どうなったか?
順番に、消費増税の影響を見ていく。
- ■増税1回目(1997年)の影響は?
- 1回目の消費増税(3→5%)は、1997年4月だった。
増税の影響を、まずは人々の暮らしの視点で見る。
-- 消費者 経済 総研 --
◆生活者の収入は?
平成元年から、生活者の年収を見ていく。
下図の通り、1997年まで「年収」は、上昇していった。※単位:円。年収=給料、手当及び賞与の合計
※出典:国税庁給与統計データ
しかし1997年で、反転下落してしまった。
その原因 とは?
1997年の消費増税で、
下落トレンドに、変わってしまったのだ。
一時的な下落では、済まなかった。
長期間も、下落が続いてしまったのだ。
つまり、第1回目の消費増税で
「失われた20年」が、始ってしまったのだ。
-- 消費者 経済 総研 --
◆失業率は?
失業率は、96年→97年は、横ばいだった
しかし消費増税で、大きく上昇していった。(下図)
失業率の上昇で、別の悪影響も引き起こした。
その悪影響とは、何か?
-- 消費者 経済 総研 --
◆自絶の数が増加へ
1997年の消費増税ショック
↓
失業率増加
↓
次の悪影響 とは?
下のグラフの通り、失業率が増加した。
同時に「自ら絶つ数」も、増えてしまった。
自絶数は、97年2.4万人→98年3.3万人と、急増した。
上図の期間で見ると
「失業率」と「自絶数」は、相関性が高い。
相関係数を分析すると「0.95」である。
1.0に近く、かなり高い相関性が、認められる。
「相関係数」は、「ゼロから、1まで」の値で表される。
全く相関がないが「ゼロ」である。
完全に相関するのが「1」だ。
一般に、「相関係数」は、下記が目安とされる。
* 0.7~1.0 → 強い相関がある
* 0.4~0.7 → 相関あり
* 0.2~0.4 → 弱いが相関あり
* 0 ~0.2 → ほぼ相関なし
上記期間の「失業率」と「自絶数」の「相関係数」は
「0.95」で、強い相関関係にある。
※失業率 出典:総務省統計局 労働力調査
長期時系列データ 完全失業率 総数
1994年2.9% 1995年3.2% 1996年3.4% 1997年3.4% 1998年4.1%
※自ら断つ数 出典:厚生労働省
参考統計資料[警察庁統計]
1994年21,679人 1995年22,445人 1996年23,104人 1997年24,391人 1998年32,863人
- ■増税2回目(2014年)の影響は?
- ◆実質年収は、下がった?
2012年から、第2次・安倍政権が、始まった。
複数年の期間で見れば、実質年収は上昇した。(下図)
上のグラフの中で2014年に注目したの下図青線だ。
消費増税が無ければ赤線の上昇トレンドだけになる。
増税が無ければ、日本国民は、楽な生活であったろう。
※この項の「実質年収」の詳しい解説は
「実感なき景気回復とは?|わかりやすく3分解説」
をご覧下さい。
-- 消費者 経済 総研 --
◆個人消費では、どうか?
GDPのおおまかな内訳は、下記の通りだ。
・約60%が、個人消費等
・約25%が、政府の支出等
・約15%が、企業の設備投資
つまり、経済のメイン・エンジンは「個人消費」だ。
そこで、GDPの内訳項目の中の
「消費支出」に、注目してみる。
2013年度からアベノミクスが、始まった。
下図の「緑の➡」が、アベノミクス効果である。
黄色矢印よりも、伸び率はアップしている。
つまりアベノミクスで、消費支出は、加速した。
しかし、2014年の消費増税で、急落した。
アベノミクスは、消費増税で、台無しとなった。
- ■増税のたびに、下落ダメージ?
- ◆3つのショックで下落
上のグラフの中で、下記の3つに注目する。
① 1997年:3→5%の消費増税ショック
② 2008年:リーマン・ショック
③ 2014年:5→8%の消費増税ショック
各々のショック前までは、消費支出は拡大していた。
しかし、この3つのショックで、下落に転じる。
増税のたびに、経済のメインの消費は下落だ
- ■下落から回復しても、減速?
- ◆1997年の増税の「前と後」を比較
増税前の伸び率と、増税後の伸び率はどうか?
2つ伸び率を、比較する。
増税前・赤➡と、増税後・黄➡では、
後者の方が低くなってしまった。(下図)
増税で下落した後は、回復しても、元には戻らない。
消費の拡大は「減速」してしまうのだ。
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◆2014年の増税の「前と後」を比較
続いて、2014年の増税の「前と後」を比較する。
増税前・緑➡と増税後・青➡では、
後者の方が、低くなった。
2回目の増税でも、消費は「減速」してしまった。
増税で下落した後は、回復しても、元には戻らない。
-- 消費者 経済 総研 --
◆増税のたびに、下落し、回復しても減速
下記グラフは、「3つの傾き」を、比較したものだ。
消費税を増税するたびに「下落」した。
回復しても、消費者へ重しが乗っかり「減速」する。
-- 消費者 経済 総研 --
◆リーマン・ショックでは、減速しない?
下図の黄色➡は、リーマン・ショック前までの線だ。
上図の黄色を、2013年まで伸ばしたのが、下図だ。
伸ばした黄色の➡で、わかることは、次のことだ。
リーマン・ショックで、消費が落ちても、復活した。
そして、「元の伸び率に戻った」のだ。
その理由は何か?
リーマンショックは、一時的なショックだからだ。
しかし消費増税では、毎年毎年、重しが継続する。
- ■2019年の増税(8→10%)では?
- 2019年10月に、3回目の増税(8→10%)があった。
2020年はコロナで、経済に大きな影響があった。
よって2020年は、経済指数も激しく変動した。
そのため、「8→10%増税後」の影響については、
2020年は除外し、2019年で見てみる。
2019年10-12月期と、18年10-12月期とを
比較した減少率の矢印を、下図に挿入した。
(グレーの色の矢印)
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◆増税のデメリット
ここまで過去の消費税の増税を見てきた。
増税で、生活負担増になり消費落ち込み、
個人消費はマイナスになった。
景気悪化等の悪影響のきっかけになってきた。
増税は、デメリットが多いことが、わかる。
続いて、消費税の減税のメリットを見ていく。
- ■消費税を減税すると、どうなる?
- 消費税は、1989年に導入以来、3回も増税された。
そのたびに、消費は下落し、その後も減速継続だ。
消費税の「減税」を、日本は実施したことが無い。
そこで、減税した場合の効果を、推測してみたい。
増税の前後とも、消費グラフは、強い線形性がある。
※線形性とは、変数と変数の関係が直線的であること。
強い線形性から「税率」と「消費」の関係は単純だ。
「減税」したら、「下図の紫矢印」のように、
「消費」が戻ることは、十分に予想できるだろう。
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◆「現金給付」と「消費税の減税」との比較は?
コロナ禍で、経済や国民生活には、大きな影響が出た。
2020年、1人10万円の特別定額給付金が支給された。
1世帯が、2人なら20万円、4人なら40万円だ。
1世帯で、年間400万円を、消費支出するとする。
その場合、消費税額は400万円×10%=40万円だ。
※消費税が、非課税又は軽減税率が適用される
取引もあるが、ここではいずれも10%課税とした。
消費税が0%なら、1世帯あたり年間40万円の救済だ。
消費税が5%なら、1世帯あたり年間20万円の救済だ。
「1人10万円の現金給付」と「消費税の減税」どちらか?
様々なコロナ支援策は、複雑で煩雑で時間もかかる。
消費税が減税なら、生活者の負担は、大きく軽減する。
-- 消費者 経済 総研 --
◆減税は、野党・自民党(有志)は賛成。政府は?
野党は、消費税の増税には、反対してきた。
自民党でも一部の有志が、コロナ対策として、
消費税減税を求める緊急声明を、2020年に出した。
一方、政府は、消費税収を、社会保障などに充てる
という3党合意の経緯があるため消極的だ。
-- 消費者 経済 総研 --
◆消費税の使い道は?
消費税は、下記の財源となっている
・社会保障(年金、医療・介護)と
・人づくり革命(子供・子育て、教育無償)
「消費税は、社会保障のため」
と言えば、増税しやすくなる。
消費税を、事実上の目的税に、している。
お金に色を付けてしまったのだ。
消費税を目的税とする例は、諸外国で見当たらない。
-- 消費者 経済 総研 --
◆消費税の代替の財源は?
消費税の年間税収は、20兆9714億(2020年度)だ。
消費税減税の場合、21兆円の代替財源は、どうか?
消費税を減税すれば、消費が拡大しGDPが成長し、
自然増収(法人税、所得税等の税収増加)が見込める。
消費税減税→消費拡大→GDP成長→自然増収で、
まかなえば、良いのだ。
不足が生じたら、国債の増発でよい。
「国債増発は、NG」と言う人が、まだいる。
国債増発は、問題ではない。(この点は続編で解説)
こうして、消費税の減税は、
「コロナで生活支援」さらに「景気対策」になる。
このスキームは、充分、検討の価値がある。
減税の必要性を、日本は議論を進めるべきではないか。
◆世界各国では、どうしている?
海外では、下記のような様々な外国が、
コロナ禍で、消費税の減税を、実施した。
アジアでは、
中国、韓国、マレーシアが、
欧州では、
イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、
スペイン、オランダ、ベルギーなど
※ここでの消費税は付加価値税を含む
- ■消費税で、損するのは誰?
- 「そもそもとして、消費税で、誰が、損をする?」
これは、誤解してる人が、意外に多いので、
本稿の最後に、この点を解説しておく。
消費税は、消費者が負担する。
企業は、負担者ではない。※
消費税では、一般消費者の財布が痛むのだ。
誤解の原因は、企業も物品購入のときに
「本体価格+消費税」を、支払っているからだ。
--消費者 経済 総研--
◆企業は、消費税を、どう扱う?
企業が物品を買えば、税込みの代金を支払う。
下記のAからBを引いた額を、企業は国に納める。
A:企業が商品を、販売した時に、
本体価格とあわせて受領する消費税
B:企業が、物品を、購入した時に、
本体価格とあわせて支払う消費税
*消費税なしの場合は?
A販売時:
「税抜き本体価格:140円」(消費税なし)の
商品を販売した時
B購入時:
「税抜き本体価格:100円」(消費税なし)の
物品を購入した時
この場合の会社の利益は
「本体価格:140円」-「本体価格:100円」=40円だ。
利益の額の40円が、会社に残る。
*消費税10%の場合は?
A販売時:
「税抜き本体価格140円」+「消費税14円」
=計154円の商品を、販売した時
↓
受領した消費税は、14円
B購入時:
「税抜き本体価格100円」+「消費税10円」
=計110円の物品を、購入した時
↓
支払った消費税は、10円
Aの14円から、Bの10円を、引いた額の4円を
この会社は、国に納める。
入金・出金の差額は、
出金154円-入金110円=44円だ。
そして上記の4円を、国へ出金する。
44円から4円が減るので、会社には40円が残る。
この場合の会社の利益は
「本体価格140円」-「本体価格100円」=40円だ。
利益の額の40円が、会社に残る。
*消費税が、「なし」と「あり」との比較では?
両方とも、40円の利益が、会社に残る。
消費税による企業へのダメージはない。
しかし「消費税なし」なら140円の商品が、
「消費税あり」により154円になるので、
いわば「強制的な値上げ」のような状態になる。
その分は、商品は売れにくくなる。
商品の売れ行きが落ちるので、
この点において、企業もダメージを受ける。
- ■続編・関連のページは?
- 本稿では、消費税増税のデメリットを解説した。
しかし日本の税率は、世界中では低い方だから、
「さらに税率を上げていこう」と言う人もいる。
スウェーデンの消費税率は、25%だ。
しかし日本の消費税は、スウェーデンより多い?
理由は〇〇だから?「皆が知らない謎」に迫った
下記ページも、ご覧頂きたい。
「日本はスウェーデンより消費税多い国?」
■番組出演・執筆・講演等のご依頼は、 お電話・メールにてご連絡下さい。 ■ご注意 「○○の可能性が考えられる。」というフレーズが続くと、 読みづらくなるので、 「○○になる。」と簡略化もしています。 断定ではなく可能性の示唆である事を念頭に置いて下さい。 このテーマに関連し、なにがしかの判断をなさる際は、 自らの責任において十分にかつ慎重に検証の上、 対応して下さい。また「免責事項 」をお読みください。 ■引用 真っ暗なトンネルの中から出ようとするとき、 出口が見えないと大変不安です。 しかし「出口は1km先」などの情報があれば、 真っ暗なトンネルの中でも、希望の気持ちを持てます。 また、コロナ禍では、マイナスの情報が飛び交い、 過度に悲観してしまう人もいます。 不安で苦しんでいる人に、出口(アフターコロナ)という プラス情報も発信することで、 人々の笑顔に貢献したく思います。 つきましては、皆さまに、本ページの引用や、 URLの紹介などで、広めて頂くことを、歓迎いたします。 引用・転載の注意・条件をご覧下さい。 |
- 【著作者 プロフィール】
- ■松田 優幸 経歴
(消費者経済|チーフ・コンサルタント)
◆1986年 私立 武蔵高校 卒業
◆1991年 慶応大学 経済学部 卒業
*経済学部4年間で、下記を専攻
・マクロ経済学(GDP、失業率、物価、投資、貿易等)
・ミクロ経済学(家計、消費者、企業、生産者、市場)
・労働経済
*経済学科 高山研究室の2年間 にて、
・貿易経済学・環境経済学を研究
◆慶応大学を卒業後、東急不動産(株)、
東急(株)、(株)リテール エステートで勤務
*1991年、東急不動産に新卒入社し、
途中、親会社の東急(株)に、逆出向※
※親会社とは、広義・慣用句での親会社
*2005年、消費・商業・経済のコンサルティング
会社のリテールエステートに移籍
*東急グループでは、
消費経済の最前線である店舗・商業施設等を担当。
各種施設の企画開発・運営、店舗指導、接客等で、
消費の現場の最前線に立つ
*リテールエステートでは、
全国の消費経済の現場を調査・分析。
その数は、受託調査+自主調査で多岐にわたる。
商業コンサルとして、店舗企業・約5000社を、
リサーチ・分析したデータベースも構築
◆25年間の間「個人投資家」としても、活動中
株式の投資家として、
マクロ経済(金利、GDP、物価、貿易、為替)の分析や
ミクロ経済(企業動向、決算、市場)の分析にも、
注力している。
◆近年は、
消費・経済・商業・店舗・ヒットトレンド等で、
番組出演、執筆・寄稿、セミナー・講演で活動
◆現 在は、
消費者経済総研 チーフ・コンサルタント
兼、(株)リテール エステート リテール事業部長
◆資格は、
ファイナンシャル・プランナーほか
■当総研について
◆研究所概要
*名 称 : 消費者経済総研
*所在地 : 東京都新宿区新宿6-29-20
*代表者 : 松田優子
*U R L : https://retail-e.com/souken.html
*事業内容: 消費・商業・経済の、
調査・分析・予測のシンクタンク
◆会社概要
「消費者経済総研」は、
株式会社リテールエステート内の研究部署です。
従来の「(株)リテールエステート リテール事業部
消費者経済研究室」を分離・改称し設立
*会社名:株式会社リテールエステート
*所在地:東京都新宿区新宿6-29-20
*代表者:松田優子
*設立 :2000 年(平成12年)
*事業内容:商業・消費・経済のコンサルティング
■松田優幸が登壇のセミナーの様子
- ご案内・ご注意事項
- *消費者経済総研のサイト内の
情報の無断転載は禁止です。
*NET上へ「引用掲載」する場合は、
①出典明記
②当総研サイトの「該当ページに、リンク」を貼る。
上記の①②の2つを同時に満たす場合は、
事前許可も事後連絡も不要で、引用できます。
①②を同時に満たせば、引用する
文字数・情報量の制限は、特にありません。
(もっと言いますと、
①②を同時に満したうえで、拡散は歓迎です)
*テレビ局等のメディアの方は、
取材対応での情報提供となりますので、
ご連絡下さい。
*本サイト内の情報は、正確性、完全性、有効性等は、保証されません。本サイトの情報に基づき損害が生じても、当方は一切の責任を負いませんので、あらかじめご承知おきください。
- 取材等のご依頼 ご連絡お待ちしています
- メール: toiawase★s-souken.jp
(★をアットマークに変えて下さい)
電 話: 03-3462-7997
(離席中が続く場合は、メール活用願います)
- チーフ・コンサルタント 松田優幸
- 松田優幸の経歴のページは「概要・経歴」をご覧下さい。