日本のコロナ致死率が低い理由|ファクターx|亜種に感染し免疫獲得済|2020年6月14日→7月12日更新

■日本の新コロナ 犠牲率(致死率)が、少ない理由 とは?
ファクターX は何か?

■亜種のコロナに 感染済みで、免疫獲得した
→これが最も有力。理由はアジアは「IgG先行型」が多いから

■BCG説・高い衛生意識・まじめに自粛・日本モデル・HLA
→いずれも、根拠薄い



「ウイルス対策」は、「最高の経済対策」 

新型肺炎から、人々の健康生命を守るため、コロナ・ウイルス対策は、重要なテーマです。
同時に、経済を守るため、ウイルス対策は、同じく重要です。

「ウイルスの制御や制圧」がなされれば、激しく落ち込んだ「景気はV字回復」でしょう。
つまり「ウイルス対策」は、「最高の経済対策」でもあります。

消費と経済の消費者経済総研では、「経済対策」は、主たるテーマの一つであります。
コロナ問題を、公衆衛生の問題としてのみではなく、経済問題として連載していきます。

そのため、消費者経済総研は、コロナ関連テーマを、連載で、お届け致しています。


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初稿:2020年6月14日、最新更新:7月12日
     本ページは、修正・加筆等で、上書き更新されていく場合があります。

ご注意
このテーマに関連し、なにがしかの判断をなさる際は、自らの責任において十分にかつ慎重に検証の上、
対応して下さい。また「免責事項」をお読みください
はじめに

新型コロナウイルスに、罹患された患者さま、
被害に遭われた皆さま、影響を受けられた皆さま、
またその関係者の皆さまに、心より、お見舞い申し上げます。
今回号のポイント
日本の新コロナ犠牲率(致死率)が、少ない理由 とは? 「ファクターX」は何か?

 ◆日本は「衛生意識が高く清潔」「まじめに自粛した」「日本モデルが成功」→ いずれも違う


BCG説は、根拠薄い。 HLA説は、肯定する根拠ない(否定的研究あり)

 ◆BCG接種国は、百万人あたり犠牲率が、低い? → これも違う

  犠牲率は、①欧米371で、②欧米(BCGあり)370、③欧米(BCGなし)372
  この3つは、ほとんど同じで、BCGは欧米では関係性が、ない

 ◆日本株のワクチンなら犠牲率低い? → 犠牲率は45で、これも因果関係は薄い

 ◆ HLA説は、積極的に肯定する根拠はなく、無関係とする研究は、一部出てきている。


犠牲率が低いアジア人は、亜種のコロナに感染済みで、免疫獲得した
  → これが最も有力

 ◆亜種に感染済み説の根拠は、アジアでは、「IgG先行型」が多いから

 ◆日本でも、新コロナ感染時に、IgMより、IgGが先に立ち上がるケースが多い

 ◆新コロナに未感染だが、亜種に感染済みで、コロナ系の免疫力を持ったからIgGが先行

 ◆「抗体による免疫」が動かなくても、過去感染「T細胞による免疫」という別系統が働く

 ◆2003年SARS流行などで、亜種コロナをアジア人は経験済みで「交差免疫」が働く


アジア人という人種・遺伝子が、コロナに強い?
  → これも、違う

 ◆米国内での人種別の調査では、アジア人の犠牲率は、低くない。

 ◆英国内での人種別の調査では、アジア人の犠牲率は、逆に高い。

 ◆アジア地域に居る人は、犠牲率が低い。しかし、米英にいるアジア人の犠牲率は、上がる。

 ◆よって、「人種の差」ではなく、「地域(場所)の差」である。


犠牲率が低いアジアの中でも、差が出る 理由とは ?

 ◆サーズ(SARS-CoV-1)と、今回の新コロナ(SARS-CoV-2)は、似たウイルス(80%も同じ)

 ◆SARS未感染の国は、新コロナ犠牲率が高く、SARS流行国は、新コロナ犠牲率低い

 ◆アジア諸国と日本の比較では、日本の犠牲率が高い → SARSが上陸しなかったから?

 ◆SARS発信源の広東省から、遠ければ遠いほど、新コロナの犠牲率が上がる


犠牲率のまとめ

 ◆欧州411、欧米BCG無372、欧米371、欧米BCG有370、日本株45、アジア5
  →BCGよりも、欧州とアジアの地域差が、歴然

T細胞に注目

 ◆抗体の保有率は、低い。しかし、有効T細胞の保有者が多くいる?

 ◆「 T細胞 による 免疫」+「抗体 による 免疫」で、3~5割の人に、免疫あり?


新コロナは、想定よりも、脅威ではなかった?

 ◆アジアの被害は、イタリアの100分の1。アクセルとブレーキの見直しも検討へ

 ◆アクセルは、社会活動・経済活動を活発化することで、ブレーキは、自粛等での感染警戒

 ◆基礎疾患のある方や高齢者には、引き続きケアを。一方で、若年等は社会活動を


日本の新コロナ犠牲率が少ない理由 とは ?
新型コロナウイルス(以下:新コロナ)の、日本での犠牲者数が、少ない理由が、見えてきました。
何が原因か?と注目されています。「ファクターX」は何か?と話題になっています。

なお、新コロナは、ウイルス名は「SARS-CoV-2」で、病名は「covid-19」です。
「死亡者数」を「犠牲者数」、「百万人あたりの死亡者数(死亡率)」を「犠牲率」と表現します。

また、「平均」は、特記ない限り「単純平均」ではなく「加重平均」で計算しています。

*犠牲率の計算と根拠データは下段に記載


日本が清潔だから?

百万人あたりの新コロナ犠牲者数は、イギリス599人、スペイン581人、イタリア559人です。
日本は、百万人あたりの犠牲者数は7人で、2桁も違います。(※以降、犠牲率7と表記)

新コロナによる日本の犠牲率が、低い理由は、何でしょうか?

日本人は、マスクを着用し「衛生意識が高い」とか、また日本は「清潔」と、言われます。
また「日本人が、まじめに自粛をした」や「日本モデルが、成功した」とも言われます。

しかし、アジアの中では、日本のコロナの犠牲率の7は、高い方なのです。
アジアの主要国では、韓国5、インド5、中国3、台湾0.3、ベトナム0などです。

これらの国の犠牲率は、日本の7より、優れています。

アジア諸国に滞在を経験した人は、「日本は、衛生水準が大変高い」と言います。
アジア諸国と日本を比較した場合は「日本が清潔・衛生だから、犠牲率が低い」とは言えません。

上記の国以外でもアジアは全般的に犠牲率が低く、日本はアジアの中では犠牲率は高い方です。
では、アジアの犠牲率が低いのは、なぜでしょうか?


犠牲率の地域差は、どうか?
欧州は?
イギリス、スペイン、イタリア等の、欧州の新コロナ禍の映像には、ショックを受けました。
欧州の犠牲率はどうでしょうか? 欧州の犠牲率の平均は、411です。※1

欧米は?
犠牲率ではなく犠牲者数では、アメリカが、一番悪い状況です。
上記の欧州に北米(アメリカ+カナダ)を加えた欧米では、犠牲率は371です。

アジアは?
アジアの犠牲率の平均は、5です。※2 欧州とは2ケタ違います。


注:ロシアは欧州にもアジアにもまたがることや、欧州は国の数が多いこと、
イタリア、英国、スペイン等に蔓延していること等から、欧州は次の西側諸国とし、
また、アジアは、中国南東部を中心に考察することから次の国とした。(その考察は後述)

*欧州
イタリア、オランダ、ベルギー、ドイツ、イギリス、フランス、スペイン、ポルトガル、スウェーデン、スイス、デンマーク、フィンランド、ノルウェー、アイルランド、ルクセンブルク、マルタ、アイスランド、アンドラ、モナコ、サンマリノ、バチカン

*アジア
中国 (本土)、シンガポール、香港、台湾、モルディブ、パキスタン、アフガニスタン、日本、バングラデシュ、ブルネイ、スリランカ、ミャンマー、ブータン、カンボジア、ラオス、東ティモール、ネパール、フィリピン、インドネシア、韓国、インド、マレーシア、タイ、マカオ、モンゴル、ベトナム

※1:「411」 = 新コロナ犠牲者数166,050人 ÷ 人口404,065,600人 × 百万

※2:「5」 = 新コロナ犠牲者数18,923人 ÷ 人口4,144,081,403人 × 百万

国別の犠牲者数・人口は、下段に記載


BCG接種国は犠牲率が低い?
新コロナの犠牲率の高・低は、BCGワクチンが関係しているという説が、あります。

BCG集団接種が無いと?

欧米の中には、BCGの集団接種を、実施していない国があります。
それは、ベルギー、イタリア、オランダ、アメリカ、カナダの欧米5か国です。

犠牲率は、ベルギー830、イタリア559、オランダ352、アメリカ341、カナダ208と高いです。
この5各国の犠牲率の平均は、372です。


欧米でBCGの有無の差は?

欧米の犠牲率の平均は、371でした。欧米でBCG集団接種の実施国の犠牲率は、370です。※1
一方、欧米でBCG集団接種がない国の犠牲率は、372です。※2

欧米の平均は371で、BCG無しは372、BCG有りは370で、3つは、ほとんど同じです。
BCGの有無は、欧米では、関係性が、なさそうです。

 ※1:370 = 新コロナ犠牲者数116,613人 ÷ 人口314,879,100人 × 百万
 ※2:372 = 新コロナ犠牲者数169,306人 ÷ 人口455,662,400人 × 百万

 ※国別の犠牲者数・人口は、下段に記載


日本株のワクチンが関係?

BCGワクチンは、複数の種類があります。日本株ワクチンで犠牲率が下がるとの説があります。

日本や、いくつかの国では、「Tokyo172」という日本株のワクチンを採用しています。
「Tokyo172」のBCGワクチン接種の国では、新コロナの犠牲率が低いでしょうか?

ワクチン接種のデータベース※1があります。筆者(松田)は、国別データを、全部見てみました。
「BCG Strain」※2の欄に「Tokyo172」と記載された国の犠牲率の平均は、45です。※3

その「Tokyo172」の国のうち、アジアの国の犠牲率は6で、非アジア国の犠牲率は159です。※4


 ※1THE BCG WORLD ATLAS BCG reccommendation only for specific groups


 ※2:BCG Strain:BCGの株のこと。日本株(Tokyo172)の他、ロシア株、デンマーク株等がある

 ※3:「45」=新コロナ犠牲者数8,998人 ÷ 人口201,400,303人 × 百万

 ※4:「6」 = 新コロナ犠牲者数923人 ÷ 人口150,461,203人 × 百万
   「159」= 新コロナ犠牲者数8,075人 ÷ 人口50,939,100人 × 百万

 台湾・日本をアジアとし、カナダ・クウェート・タジキスタンをアジア以外と分類している。
 アジアの範囲は、別掲の理由による。


やはり、BCGよりも、地域差が大きい?
ここまでに記載した条件別の犠牲率を並べると、下記の通りです。

欧州       411
欧米BCG無   372
欧米      371
欧米BCG有   370

非アジアTokyo株 159
Tokyo172株   45
アジアTokyo株   6
アジア       5

やはり、欧州とアジアの地域差が、歴然です。


アジア人という人種・遺伝子が、コロナに強い?→ これも、違う

この項では、低被害なのは「アジア地域」なのか?「アジア」なのか? を見ていきます。


米国では、アジア人の犠牲率は、低くない。

米国内での人種別の調査では、アジア人の犠牲率は、低くないのです。
ニューヨーク市での、百万人あたり犠牲率は、白人102、アジア人84です。

前項で既述のとおり、アジア地域での犠牲率は、5でした。
犠牲率の差は、「NY市におけるアジア人」が、「アジアにおけるアジア人」の17倍です。
( 17倍 ≒ 84 ÷ 5 )

同じアジア人でも、アジアにいるより、NY市にいる方が、17倍も犠牲率が高くなります。
犠牲率は、イタリアは、アジアの約112倍ですが、NY市では白人はアジア人の1.2倍です。※1


英国では、アジア人の犠牲率は、高い。

上記は、米国でしたが、英国では、どうでしょうか。
英国内での民族別の調査では、アジア人の犠牲率は、高いのです。

「英国公衆衛生庁」(Public Health England)のレポートからは、
アジア人の死亡率は、白人より高い、とされています。※2

米国・英国の調査から、犠牲率の高低は「人種ではなく、場所」と、捉えることができます。


※1 出典:covid-19-deaths-race-ethnicity-04082020-1
 (The Official Website of the City of New York|April 6, 2020)

ニューヨーク市|人種・民族別の10万人当たりのcovid-19症例の年齢調整済み死亡率
白人10.2 アジア人8.4

Age adjusted rate of fatal lab confirmed covid-19 cases per100,000by race/ethnicity group
White 10.2 Asian 8.4


※2 出典:Disparities in the risk and outcomes of COVID-19
(PHE:Public Health England:英国公衆衛生庁|June 2020)

COVID-19による死亡率は、黒人およびアジアの民族グループの人々の間で最も高かった。
Death rates from COVID-19 were highest among people of Black and Asian ethnic groups.

COVID-19による死亡率は、白人と比較して、黒人とアジアのグループの方が高かった。
Death rates from COVID-19 were higher for Black and Asian ethnic groups when
compared to White ethnic groups.


なぜ、アジア地域は、犠牲率が低いのか?
亜種に感染済み説

「BCG説」以外には「亜種のコロナウイルスに、過去に感染したから」という説があります。

新型コロナウイルス(正式名称:SARS-CoV-2)の亜種のことを、
「コロナファミリーウイルス」や「SARS-X」とも、言われます。


亜種説の根拠(IgG先行型が、多い)

―「IgM」抗体が、先に立ち上がり、次に「IgG」抗体が、立ち上がるー
これが、ウイルスに対する、免疫反応の教科書的な解説です。

IgMは、いわば、第1次偵察隊で、敵と戦いながら、敵の様子を調べます。
続いて、その敵の状態にマッチする第2次攻撃隊のIgGが、敵(ウイルス)を攻撃するのです※1

交戦済みの敵と再会の際は、既に敵を理解しているので、1次偵察隊IgMは重要ではありません。
すかさず、攻撃隊のIgGが出撃します。IgG先行は会敵済み(感染済み)の根拠となります※2

日本人には、新コロナ感染時に、IgGが先に立ち上がるパターン(IgG先行型)が多いのです※3
新コロナには未感染だが、亜種コロナ感染済みで、コロナ系免疫力を持つということです


※1出典:独立行政法人理化学研究所

免疫システムでは、病原体が体内に侵入すると病原体に対する特異性が低いIgM抗体が最初に産生され、
病原体の感染や増殖を第一線で防御します。
その後、病原体に対し特異性が高いIgG抗体を産生し、病原体を完全に撃退します。

※2出典-1:抗体産生のしくみ│研究成果 国立研究開発法人 科学技術振興機構

私たちの体は、1度出会った細菌やウイルスなどの抗原に再び出会うと、
1度目よりも大量の抗体を迅速に作り出して速やかにその抗原を除去し生体を防御します。
これは、抗原に初めて出会うIgM型ナイーブB細胞よりも
1度目の免疫反応で抗原を記憶したIgG型メモリーB細胞が素早く反応するためです。(省略箇所あり)

※2出典-2:長崎大学熱帯医学研究所

初感染例では先にIgMが上昇して、ついでIgGが上昇します。しかし、再感染例では最初からIgGが陽性で、
上昇もIgGが先で、遅れてIgMの上昇、となります。(ツツガムシ症例でのコメントから参考)


※3出典:下図2枚:サイエンス映像学会第11回大会2020年5月23日(土)
          児玉龍彦(東京大学 先端科学技術研究センター リーダー/東京大学 名誉教授)


亜種のSARS経験説は有力(SARS流行国は、新コロナの犠牲率低い)
SARS流行国は?

犠牲率は、アジアは5で、欧米の371と比べて、少ないです。
アジア圏は、2003年のサーズ(SARS-CoV-1)が、流行しました。
それを経験したことで、新コロナ(SARS-CoV-2)の免疫力を、獲得したという説です。

SARSは2002年11月に、中国の広東省で最初に報告され、流行が発生したと言われます。
アジアで感染数の多い順は中国5327人、香港1755人、台湾346人、シンガポール238人です。

この上位4か国での、新コロナの犠牲率の平均は、3で、アジア平均の5より小さいです。
サーズを経験した事で、新コロナの免疫を獲得し、犠牲率が低いと、考えられます

 「3」= 4,670人 ÷ 1,470,625,103人 × 百万


SARS未感染の国は?

日本でのSARSの感染例は、確認されませんでした。
日本の新コロナの犠牲率は7です。アジア平均の5より大きいです。

日本以外にも、SARSの感染例がゼロの国は、あります。
それらの国の犠牲率の平均は、6で、こちらも、アジア平均の5より大きいです。

 「6」=4,064人÷675,167,900人×百万
  SARSの感染例がゼロの国:パキスタン,バングラデシュ,日本,ミャンマー,アフガニスタン,ネパール,
  スリランカ,カンボジア,ラオス,東ティモール,ブータン,モルディブ,ブルネイ


流行源の広東省からの距離では?

アジア地域をSARS流行源の広東省に近い順に並べると、東アジア、東南アジア、南アジアです。
犠牲率は東アジア3.5、東南アジア4.5、南アジア5.5と、流行源に近いほど犠牲率は低いです。


SARSと新コロナの関係は?

上記のように、新コロナの犠牲率は、SARSの経験国で低く、SARS未経験の国は高いです。
SARS(SARS-CoV-1)に感染し、新コロナ(SARS-CoV-2)の免疫力を獲得した可能性があります。

新コロナウイルス(SARS-CoV-2)とSARS(SARS-CoV-1)は、ファミリー関係です。
この二つのウイルスの遺伝情報は、80%も同じで、同じウイルス種とされています。

亜種のコロナウイルスは、SARS-CoV-1以外にもあります。

ヒトに感染するコロナウイルスは計7種類で、動物に感染するコロナウイルスも別途あります。
また認知せず感染した未確認の別の亜種コロナウイルスの可能性を示唆する意見もあります。

SARS(SARS-CoV-1)をはじめ、亜種コロナウイルスに暴露し、コロナ系免疫を獲得という事です。


 ※出典:ScienceDirect-Analysis of therapeutic targets for SARS-CoV-2
     and discovery of potential drugs by computational methods -

 ヒト由来のすべてのコロナウイルスの中で、SARS-CoV(80%)は、
 SARS-CoV-2に最も高いゲノム配列同一性を示しました。
 Among all coronaviruses from human, SARS-CoV (80%) exhibited
 the highest genome sequence identity to SARS-CoV-2.


HLA説は?
「HLA」とは、簡単に言うと「白血球の血液型」です。
血液型といえば、A、O、AB、B型の区分が思い浮かびますが、これは「赤血球の型」を指します。

このHLAのタイプの差で、免疫力の差が出るのではないか、という考えがあります。

しかし、「アジア人がコロナ犠牲率が低いのは、アジア人のHLAが、○○だからだ。」
という結果は出ていません。これからの研究結果に、期待したいです。

一方、欧州では、HLAと新コロナ症状との関係性がみられないとの研究結果は出てきています。

◆参考文献

Genomewide Association Study of Severe Covid-19 with Respiratory Failure(NEJM)

HLA分析
いくつかのウイルス感染におけるその重要な役割を考慮して、拡張HLA領域を精査しました。HLA複合体には、示唆的な関連の有意性のしきい値でさえ満たされるSNP関連シグナルはありませんでした。古典的なHLA遺伝子座の専用分析では、Covid-19または疾患の重症度との有意な対立遺伝子の関連は示されず、ヘテロ接合体および分岐対立遺伝子の利点またはHLA結合SARSの予測数のさらなる分析CoVの-2ペプチドは、このデータセットにCovid-19との有意な関連を示さなかった(省略箇所あり)

HLA ANALYSIS
Given its important role in several viral infections, we scrutinized the extended HLA region (chromosome 6, 25 through 34 Mb). There were no SNP association signals at the HLA complex that met even the significance threshold of suggestive association: P<1×10−5 (Fig. S10 in Supplementary Appendix 1). Dedicated analysis of the classical HLA loci showed no significant allele associations with either Covid-19 or disease severity (oxygen supplementation only or mechanical ventilation of any kind), and further analysis of heterozygote and divergent allele advantage or predicted number of HLA-bound SARS-CoV-2 peptides did not show significant associations with Covid-19 in this data set

新型コロナウイルスの重症化の遺伝的要因 」(公益財団法人 東京都医学総合研究所)


「T細胞」に注目
感染したのに「抗体」がない?

一般的に、ウイルスに感染すると、そのウイルスに対応する抗体が、できます。
しかし、新コロナ感染者において、抗体反応が見当たらない人がいる、と言われています。


「抗体による免疫力」と「T細胞による免疫力」の2系統?

単純な言い方をすると、

・「 抗体 」 は、敵であるウイルスを攻撃します。(液性免疫という)
・「T細胞」は、ウイルスに感染した細胞を破壊します。(細胞性免疫という)


抗体がなくても、T細胞が、働く

そこで、スウェーデンの「カロリンスカ研究所」の論文に注目です。

無症状・軽度の新コロナの患者の大半が、抗体が無いにもかかわらず、
高機能の耐久性「メモリーT細胞」の反応を示したのです。

「T細胞」の活性化は、急性の新コロナでの特徴であることが、わかりました。
新コロナに対応するT細胞が、回復期に、機能を獲得したのです。

抗体がない人でも、感染から数ヵ月後に「T細胞」の反応を示し、免疫保有の可能性があります。
「抗体による免疫力」と「T細胞による免疫力」の2系統があるのでは、と考えています。

スウェーデンでは、抗体の保有率が6~7%程度とされています。
その倍くらいの人々に、「T細胞による免疫力保有」の可能性が、あります。

スウェーデン以外の世界各地でも、
「T細胞による免疫力の保有者」が、3~5割くらい存在するのでは、とも聞きます。

「免疫パスポート」は、
「抗体・証明書」以外に、「有効T細胞・証明書」でも、可能になるかもしれません。


※出典:Robust T cell immunity in convalescent individuals with asymptomatic or mild COVID-19
     (Karolinska COVID-19 Study Group「カロリンスカ研究所」の論文


抗体以外の免疫システム とは ?

抗体検査が陰性でも、免疫力ある?

上記で、免疫には「抗体」と「T細胞」の2系統があるという話をしました。
これは、ウイルスに感染したことで、獲得した免疫なので「獲得免疫」といいます。

「獲得免疫」のほかに、「自然免疫」があります。
自然免疫は、ウイルス感染とは関係なく、もともと人体に備わっている免疫力です。

いわば、「自然免疫」は、入り口に立っている「警備員」のような役割です。
入り口の警備員である自然免疫で、ウイルスに対処し、感染せず終わる場合があるのです。

この場合は、「ウイルスに、暴露したが、感染しなかった」という言い方が、されます。
自然免疫で、防御できない場合に、次に、攻撃隊である獲得免疫(抗体やT細胞)が戦います。

ニューヨークは、既に、集団免疫が成立で、収束方向?
抗体の保有率が低いのは?

抗体検査で陽性率が低いことに関して、下記が言われています。

 ① 自然免疫やT細胞が、戦っていて、抗体が出動していないので、抗体の値が上がらない。
 ② 感染後、月日の経過とともに、抗体の値が下がり、検出限界未満になる。

②でも、再感染したら、休んでいた抗体が、活動を再開するので、免疫力があると言われます。
よって「調査結果では、抗体の保有率が低いから"集団免疫" には程遠い」とは言い切れません。

抗体の保有率が低くても、
 新コロナに、 「自然免疫」で勝てる人 + 「T細胞」で勝てる人
が、それ以上にいる、という可能性があります。

自然免疫+抗体+T細胞の3系統で、多くの人が、既に、免疫力を持っている可能性があります。
免疫力を持っている人が、大半(65%など)になれば、収束に向かいます。

これを「集団免疫」と言います。
ニューヨークの感染数動向を見ると、NYは既に集団免疫が成立し、収束方向かもしれません。


アフターコロナに向けたウイズコロナ
アジアの被害は、欧州の100分の1程度

イタリアの医療崩壊の映像には、衝撃を覚えました。日本もこの姿になるかと心配されました。
しかしアジアは、イタリアのようにならず、アジアの犠牲率はイタリアの100分の1未満です。

基礎疾患のある方や高齢者には、引き続き、注意をしながらの生活になるでしょう。
これらの比較的リスクが高い方々へのケアを、大切にすべきです。

一方で、若年層を中心に、社会活動を2019年型へ戻していく検討も必要だと思われます。

つまり、アクセルとブレーキのバランスの見直しも、検討対象だと思います。
アクセルは、社会活動・経済活動を活発化することで、ブレーキは、自粛等での感染警戒です。

前項のように、「抗体・証明」や「有効T細胞・証明」が、検査で可能であれば、
低リスク者と高リスク者の区分が、可能になるかもしれません。

犠牲率の根拠数値

地域/死亡数/人口/犠牲率(百万人あたり)

◆SARS流行国
アジア/中国 (本土)/4,634人/1,433,783,700人/3
アジア/シンガポール/25人/5,804,300人/4
アジア/香港/4人/7,436,200人/1
アジア/台湾/7人/23,600,903人/0.3*T

◆SARS感染国
アジア/フィリピン/994人/108,116,600人/9
アジア/インドネシア/1,801人/270,625,600人/7
アジア/韓国/273人/51,225,300人/5
アジア/インド/6,946人/1,366,417,800人/5
アジア/マレーシア/117人/31,949,800人/4
アジア/タイ/58人/69,625,600人/1
アジア/マカオ/0人/640,400人/0
アジア/モンゴル/0人/3,225,200人/0
アジア/ベトナム/0人/96,462,100人/0

◆SARSなし
アジア/モルディブ/8人/531,000人/15
アジア/パキスタン/1,935人/216,565,300人/9
アジア/アフガニスタン/327人/38,041,800人/9
アジア/日本/916人/126,860,300人/7*T
アジア/バングラデシュ/846人/163,046,200人/5
アジア/ブルネイ/2人/433,300人/5
アジア/スリランカ/11人/21,323,700人/1
アジア/ミャンマー/6人/54,045,400人/0
アジア/ブータン/0人/763,100人/0
アジア/カンボジア/0人/16,486,500人/0
アジア/ラオス/0人/7,169,500人/0
アジア/東ティモール/0人/1,293,100人/0
アジア/ネパール/13人/28,608,700人/

◆欧州BCG集団接種あり
欧州/サンマリノ/42人/33,900人/1,239
欧州/アンドラ/51人/77,100人/661
欧州/イギリス/40,465人/67,530,200人/599
欧州/スペイン/27,135人/46,736,800人/581
欧州/スウェーデン/4,656人/10,036,400人/464
欧州/フランス/29,142人/65,129,700人/447
欧州/アイルランド/1,678人/4,882,500人/344
欧州/スイス/1,921人/8,591,400人/224
欧州/ルクセンブルク/110人/615,700人/179
欧州/ポルトガル/1,474人/10,226,200人/144
欧州/ドイツ/8,769人/83,517,000人/105
欧州/モナコ/4人/39,000人/103
欧州/デンマーク/587人/5,771,900人/102
欧州/フィンランド/322人/5,532,200人/58
欧州/ノルウェー/238人/5,378,900人/44
欧州/アイスランド/10人/339,000人/29
欧州/マルタ/9人/440,400人/20
欧州/バチカン/0人/800人/0

◆欧米BCG集団接種なし
欧州/ベルギー/9,580人/11,539,300人/830
欧州/イタリア/33,846人/60,550,100人/559
欧州/オランダ/6,011人/17,097,100人/352

北米/アメリカ合衆国/112,096人/329,064,900人/341
北米/カナダ/7,773人/37,411,000人/208*T

◆Tokyo172採用(下記以外に *T)
クウェート/254人/4,207,100人/60
タジキスタン/48人/9,321,000人/5

※出典:2020年6月7日時点
国・地域毎の2019年コロナウイルス感染症流行状況 – Wikipedia
国の人口順リスト – Wikipedia

おわりに

あらためて、新型コロナウイルスに、罹患された患者さま、被害に遭われた皆さま、
影響を受けられた皆さま、またその関係者の皆さまに、心より、お見舞い申し上げます。

【筆者プロフィール】
松田優幸が登壇のセミナーの様子
【松田 優幸 (消費者経済総研 チーフ・コンサルタント) 経歴】

*1986年
私立 武蔵高校 卒業

*1987年
慶応大学 経済学部 入学

経済学部で、
・マクロ経済学(GDP・失業率・インフレーション・投資・貿易収支等)
・ミクロ経済学(家計・消費者、企業・生産者、取引市場等)・労働経済学を専攻
 経済学科「高山研究室」にて、貿易経済学・環境経済学を研究

*1991年
慶応大学 卒業  東急不動産(株) 入社

*1997年
親会社の東急電鉄(株)へ逆出向
消費の現場である商業施設と街づくりの計画担当

*2000年
東急不動産 復職
各種の商業施設の企画開発・運営、接客等で消費の現場の最前線に立つ。

*2005年
東急不動産から、消費・商業・経済のコンサルティングをおこなう
株式会社 リテール エステートへ移籍し14年間、

全国の消費の現場を視察・調査。その数は多岐にわたる。

*現 在
消費者経済総研 チーフ・コンサルタント
兼 リテール エステート リテール事業部長 (52歳)

*資 格
 ・ファイナンシャル・プランナー
 ・宅地建物取引士資格者
 ・不動産コンサルティング技能登録者(新制度更新前まで)
 ・簿記3級


【消費者経済総研について】

■研究所概要
名称  : 消費者経済総研
所在地 : 東京都新宿区新宿6-29-20
事業内容: 消費・商業・経済の、調査・分析・予測のシンクタンク
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