国の借金増加は問題なし|その上限とは?|MMT理論のデメリットは?|2020年9月11日更新

経済の専門家・評論家が、わかりやすく解説
MMTと日本国の借金

借金は、現在問題なく、今後さらに増えても大丈夫。その理由とは?
では借金は、どこまで増えても、よいのか? その上限額とは?

お札を刷って経済対策や借金返済?
借金増加・通貨創造のデメリットはインフレで、デフレ途上なので好都合

番組出演・執筆・講演等のご依頼は、お電話・メールにてご連絡下さい

初稿:2020年4月12日、2稿:2020年5月29日分反映-、最新稿:2020年9月11日  
 本ページは、修正・加筆等で、上書き更新されていく場合があります。

ご注意
このテーマに関連し、なにがしかの判断をなさる際は、自らの責任において十分にかつ慎重に検証の上、
対応して下さい。また「免責事項」をお読みください
今回号のポイント
-消費者経済総研は、消費と経済を、わかりやすく、解説します-



<MMTと、日本国の借金問題>

◆ 最近注目の経済理論「MMT」や「MMT的理論」 とは ?

◆ コロナ対策で、国の借金58兆円増加。これを将来世代へのツケ回しと言う批判者がいる

◆ しかし、日本の借金は、現在、問題なし。 さらに、今後増えても問題ない 理由とは?



<お金を刷って 増やせば よい?>

◆ やる気になれば、政府が自ら「お札を刷って、増やし」経済対策や借金返済ができる

◆ 今までも、政府は自ら「お札を刷った」ことがある(明治・大正・昭和でも)

◆ 今までも、政府は自ら「高額な硬貨」を、作ったことも、ある

◆ 千円札には「日本銀行」と書いてあり、十円玉には「日本国」と書いてある理由とは?

◆ 「硬貨の発行者は、政府」「紙幣の発行者は、日銀」と、分かれている理由 とは ?



<今後も、借金が増えたり、通貨の増発は、よいのか?>

◆ 日本国が借金増加(国債増発)しても、問題ない。しかしデメリットは、無いのか?

◆ 国債増発 → 借金増加 → 通貨増加 このプロセスでの副作用とは?

◆ マネーサプライ(通貨供給量)が、増加すると「 カネ > モノ 」になり、物価上昇へ

◆ つまり、デメリットは、通貨増加による「インフレ(物価上昇)」という副作用



<では、どこまで借金を、増やしてよいか? その上限 とは ?>

◆ 答えは、CPIが、0.4% なのが 2% になるまで?



<日本に、インフレ傾向は、好都合 とは ?>

◆ 日本は、デフレ脱却が未完成なので、インフレは問題ない。かえって好都合

◆ 仮に、デフレ脱却後に、インフレが過熱したら、制御すれば良いだけ。問題は無い



<「MMT」や「MMT的な理論」とは?>

◆ 上述に関する理論的な裏付けは、最近注目されている「MMT」の理論

◆ こうして国の「借金増加」や「通貨創造」で、経済対策の予算が増え、デフレ脱却へ

◆ MMTの理論を実践できないのは、自然科学と異なり、経済学は実験が難しいから


■■ 要 約 編 ■■
下段に、「詳細編」があります。先立って、前段に「要約編」を掲載します。


日本は借金大国ではなく、国の借金は、問題ない(前回号までの内容)
はじめに。 「国債」について。

国が借金する場合は、「国債」の発行による場合が、中心です。
政府が「国債」という債券を販売し、「買い手」から、その代金を受領します。

「買い手」は、政府にお金を渡した証書として「国債」という債券を、受領します
買い手が国債を保有しているのは、その買い手が、政府に対して、金を貸しているという事です。

満期には、国債の債券を差し出して、買い手は、お金を受け取ります。
これで、買い手は、政府から貸付金を回収し、逆に、政府は買い手に、返済したことになります。

 ※なお、国債の債券は、2003年からペーパーレス化されました。

日本国政府が、借金をする際は「国債」の発行によることが、多いです。
国債以外の借金もあります。その詳細は「前々回号(日本の借金の範囲・定義)」を参照して下さい。


日本は、「負債」は多いが、「純負債」は少ない

先進7か国の比較において、日本国の「負債」(借金)は、確かに、多いです。
しかし、「資産」も多いので、「純負債」は少ないのです。(純負債=負債-資産)

日本の「純負債」の水準は、先進7か国の中で、平均値よりも、少ないのです。
よって、日本国は、借金大国どころか、「借金・優等生」なのです。

 ※詳細は、「前々回号(日本は借金大国ではない)」を参照ください。


政府と日銀は、親会社と子会社。 連結すれば、負債は減少

政府は、国債発行等で借金しています。その国債の多くを、日銀が、保有しています。
政府は、日銀の株式(出資証券)の55%を有してます。いわば政府が親会社、日銀が子会社です。

「親会社に対する、子会社の債権」と「子会社に対する、親会社の債務」とがあります。
この債権・債務は、連結会計では、相殺されます。親子間で、借金の相殺です。

言い変えると、「政府の借金は、日銀の財産」で、「親の借金は、子の財産」です。

「純負債が少ないので、優等生」と「政府の債務は、日銀の債券で、相殺」とから、
「日本は借金大国ではない。日本の現在の借金は、問題ない」のです。

  ※詳細は、「前回号(政府と日銀)」を参照ください。


国の借金は、現在は良くても、今後の増加は、NGか?
国の借金は問題ないです。しかし、現在は良くても、今後のさらなる増加は、NGでしょうか?
今後の更なる増加も、問題ありません。下記の2つのいずれかで、解消できるからです。

 ① 国の増加借金(国債増発)を、日銀が、追って国債購入し、引き受ける
 ② 国の増加借金(国債増発)を、政府が、通貨を新規発行し、そのお金で返済する

◆① 国債増発

前項の①は、国債の増発です。その際、親子関係にある日銀が、国債を保有ことで決着させます。
現在は、直接引き受けは、原則禁止なので、間接引き受けとなります。(詳しくは下段詳細編)

◆② 通貨の新規発行

借金返済の手段として、前項②の「新たに、通貨を、追加発行」する方法が、あります。
「通貨を、新たに生み出して、その通貨で、返済してしまえば良い」という考え方です。

政府には「貨幣の発行権」があります。政府が自らお金を作り、そのお金で返済する方法です。
「国の借金?お金を刷って返せばいい。簡単だろ?」という麻生氏フレーズも、ありましたね。

 法的根拠は「詳細編」を参照


国の借金増加は、問題ない。 しかしデメリットは、無いのか?
 ~結論は、デメリットは、ありえます。「インフレという副作用」です~

例えとして、災害が起きた場合の、復興工事のケースで、解説してみます。
復興工事の財源は、通常は、「増税」「借金増加」(国債増発)です。

「増税型」なら?

「増税」なら、例えば、政府が、1兆円を民間から吸い取って、その1兆円で、復興工事を発注します。
そこまででの、日本全体でのお金の量は、大枠では変わりません。

1兆円が、民間から納税で政府に渡り、政府が工事発注で民間へ1兆円払います。
最終的には、民間は±ゼロで、政府も±ゼロです。

1兆円が、民間(納税)政府(工事発注)民間 へ、と戻ってくるからです。


「借金型」なら?

一方「借金型」つまり、政府が国債を発行し、民間に買って貰う方法での調達はどうでしょう。
民間が、政府から1兆円の国債を買うことは、民間が政府へ1兆円を貸し付けたとなります。

1兆円が、民間から貸し付けで政府に渡り、政府が工事発注で民間へ1兆円払う。
ここまでは、民間は±ゼロで、政府も±ゼロです。上の「増税型」と一緒です。

  これとは別に、日銀(国債購入)民間 へ、と1兆円が、戻るのです。

どういうことかと言うと、民間が政府に貸し付けた債権(国債)を、1兆円で、日銀に売ります。
すると、民間には、最終的に、その国債の売却代金の1兆円が、残ります。

よって「増税型」より「借金型」の方が、民間に出回るおカネが、1兆円多くなります。
これで「カネの量>モノの量」へ傾きます。すると、物価は上昇し、経済は、インフレへ傾きます。

ここでは、要約に、とどめました。
このインフレ発生の詳しい説明は、下段の「詳細編」に、わかりやすく掲載しています。


通貨の新規発行では?(オプション編)
従来は、前項の「増税型」「借金型」が、実施されてきました。

3番目にオプション編として、新たに、お金を増やす方法として、下記方法があります。
前々項の「② 通貨の新規発行」のことです。

 [A] 日本国(政府)が、自ら「高額の硬貨を作る」
 [B] 日本国(政府)が、自ら「紙幣を刷る」

この2つでも、過剰になると、「カネの量>モノの量」へ傾き、インフレ過熱してしまいます。
なお、現行法での発行主体は、 硬貨は、日本国(政府)で、紙幣は、日銀です。(詳しくは下段の詳細編)

[B]も、制度整備した上で、やろうと思えば、できます。実際に日本も、近代に経験済みです。
世界の過去の歴史でも、[B]は、しばしば実施されています。シンガポールは、今でもやってます。

「通貨の新規発行」においても、お金が増えるので、副作用は、インフレ発生です。

日本はデフレなので、問題ない。 かえって好都合?
国債増発(借金増加)でも、新規の通貨発行(硬貨又は紙幣)でも、インフレのリスクがあります。

しかし、日本はデフレ脱却が、未達成なので、インフレという副作用は、問題ないのです。
それどころか、デフレ脱却をするチャンスになるので、かえって好都合です。


最近注目の「MMT」理論 とは ?
上述の理論的な裏付けとして、最近注目されている「MMT」という理論があります。

MMTとは、「Modern Monetary Theory」の略で、「現代貨幣理論」と訳されます。
MMTの要点は、下記のとおりです。

「国は、借金が返済できなかったり、デフォルトしたり、財政が破綻する等のリスクはない。

自国通貨の発行権を持つ国家は、新たに、通貨を発行すれば、良いからだ。
その新たに生まれた通貨で、債務(借金)を、返済をすることが、できるからだ。」


日本での「MMT的な理論」 とは ?
実は、日本では「MMT」より前から、長年にわたり「MMT的な理論」が、主張されてきました。

 「国が、お金で困っているなら、自ら紙幣を、どんどん刷れば良い」

 「景気が悪くて、国民が困るなら、お金を国民に、ばら撒けば良い」

 「日本中で、ヘリコプターから、お金を、四方八方へ、ばら撒けば良い」

これらに対する反論は、「インフレが起きるから、ダメ」でした。

まとめますと、お金を増やす方法は、下記となります。

 *日本国(政府)が、自ら「紙幣を刷る」

 *日本国(政府)が、自ら「高額な硬貨を作る」

 *日本国(政府)が、国債を発行・販売し、日銀が国債購入し、その代金のお金を市中供給する

新しく生まれたお金で、財政出動(公共事業など)を行い、景気を拡大させる、というものです。


どこまで 借金増えても 大丈夫か? 上限は?
日本は、デフレ脱却が未完の国なので、インフレは、逆に好都合です。
デフレ脱却と言えるインフレ率は、2%です。日銀も、物価安定の目標を、2%としています。

しかし、日本のインフレ率は、2013~2019年の単純平均では、0.4%しありません。
少なくとも、CPIが2%になるまでは、借金が増加しても、okです。

また、2%を超えてはいけない、というわけでも、ありません。
2%を超えて、過剰な加熱がみられたら、次項のように、冷やせばよいからです。


「MMT」や「MMT的理論」で、悪性インフレが起きたらどうする?
望まないほどのインフレ過熱が、仮に起きた場合は、マクロ政策で、冷やせばよいのです。

マクロ政策で冷やすとは、政府による、「増税」や「財政出動の縮小」などです。
また、日銀による「利上げ」や「量的・質的な、金融の引き締め」もあります。

インフレが過熱しても、それらでコントロールするから、心配しなくても、大丈夫なのです。


「MMT」や「MMT的な理論」に躊躇は、不要
◆ 「国の借金増加」または「通貨創造」で、経済成長とデフレ脱却

こうして政府の借金増加などで、経済対策の予算が増え、景気下支えや、景気刺激策になります。
また、日本を長年悩ませた、デフレの脱却にもなるのです。良いことづくめです。

20世紀までは、大規模な戦争で、巨額のカネが動き、ハイパーインフレが、発生しました。
しかし、21世紀の世界は、大規模な戦争状態に、なっている訳では、ありません。

また、近年では、コンピューターやネットで、各種の指数やデータは、素早く把握できます。
21世紀では、インフレ率は、観測可能で、制御も可能です。

「100円のミカンが、いつのまにか、1万円になっていた! 気付かなかった!」
 → こんなことは、無いのです。

■■ 詳細 編 ■■

以上が、「要約編」でした。 ここからは「本編・詳細編」です。



日銀以外からの借金は? (日銀以外が保有する国債は?)
日銀が、民間から、国債を購入

国債の多くは、日銀が持っていますが、民間銀行や民間人が持っている国債も、あります。
つまり、民間企業・民間人に対しても、日本国政府は、返済義務を負っています。

 ※国債保有者の内訳は、「前回号(国債の保有者別内訳)」を参照して下さい。

仮に、「日本国政府が、民間へ返済できない」となるとしたら、どうでしょうか?
日銀が、その民間保有の国債を、購入することも、選択肢になります。

すると政府への貸し付けの債権は、民間から日銀へ移り、日銀が保有することになります。
これで、親子間の借金となります。親子間で相殺という考え方です。


通貨発行

それ以外の選択肢として、「新たに、通貨を、追加発行」するという手段も、あります。
通貨を新たに生み出して、その通貨で返済してしまえば良い、という考え方です。

政府には「貨幣の発行権」があります。(通貨法4条1項)
ですので、政府が自らお金を作り、そのお金で返済する方法です。

 ※「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」(略称:通貨法)


「通貨」、「貨幣」、「紙幣」 とは ?

話の流れの途中ですが、日本での通貨、貨幣、紙幣などについて解説します。

「通貨」 = 「貨幣」 + 「日本銀行券」 です。 (通貨法 2条3項)
「貨幣」は、「コイン」や「硬貨」と言ったり、「日本銀行券」は、「お札」や「紙幣」とも言います。

馴染みある言葉のほうが、混乱しないので、本稿では「貨幣」ではなく「硬貨」とします。

政府は、今まで、「10万円の記念硬貨」なども、発行しています。
記念硬貨では10万円が額面最高額ですが、他にも様々、高額記念硬貨を、発行してきました。


発行主体は?

~ 硬貨は、日本国(政府)、 紙幣は、日銀 ~

法律で、「日銀」は、「銀行券(紙幣)」を発行する、と定めています。(日本銀行法46条)
日銀は、一万円券、五千円券、二千円券、千円券の4種類の日本銀行券を、発行しています。

一方、「硬貨」は、日銀ではなく、「政府」が発行しています。(通貨法4条1項)
硬貨の種類は、五百円、百円、五十円、十円、五円、1円の六種類です(通貨法5条1項)

皆さんのお財布の中の、紙幣と硬貨を、見て下さい。発行主体が、書いてあります。

紙幣」は、せっかくだから、千円札ではなく、1万円札を見ましょう(笑)
「日本銀行券 壱萬円 日本銀行」と、書いてあります。

次に、「硬貨」を、見てみましょう。(これも、せっかくだから、五百円玉で)
「五百円 日本国」と刻印されています。

発行主体は、硬貨は日本国(政府)で、紙幣は日銀なのです。


硬貨から、紙幣へ進化。 両替・金庫の商人から、銀行へ進化

経済活動が発展していくと、硬貨のやり取りが、増えていきます。
それと共に、硬貨の重さや盗難リスクが、ネックになります。

そこで、金持ちの人は、両替商人や金庫商人へ、硬貨を預けます。
その人は、「硬貨を預けた証拠の紙」を、もらって帰ります。

預けた「証拠の紙(預り証)」の紙が、「銀行券」の始まりです。
そして、両替商人や金庫商人は、銀行業者に、なっていきます。

硬貨が必要な時は、預け人が、両替・金庫の商人へ行って、預り証を提出し、硬貨を引出します。
その硬貨を使って、買い物をします。しかし、やはり硬貨は、重くて不便です。

また、両替・金庫の商人のところへ、いちいち、出かけるのは、面倒です。
ならば、最初から、預り証で、代金支払いをすれば便利だ、と気付きます。

こうして、預り証は、「紙幣」として、広がっていくのです。

世界の歴史を見ても、様々な「硬貨」を、様々な「政府」が、発行しています。
一方、預り証から発展した「紙幣」を「銀行」(前身は両替・金庫の商人)が、発行したのです。


政府は、日銀から、直接に借金できるか?
政府が国債発行する際の主な流れは、政府から民間銀行等が国債購入です。
その後、 民間銀行等から、日銀が購入します。

なお、政府 → 日銀へ 直接に国債を売ることは、現行法では、できません。(財政法第5条)
直接販売だと、あまりにも簡単に、お金の創造ができてしまい、節操が無くなるからです。

但し現行法でも、満期が来た国債の借り換えは、政府と日銀で、直接の取引が可能です。
この借り換えは、ロールオーバーや、リファイナンス等とも言います。


政府が、自ら貨幣を発行した例 とは?
① 日本国(政府)が、自ら「高額の 硬貨 を作る」
② 日本国(政府)が、自ら「紙幣 を刷る」

①は、記念硬貨の発行という形で、しばしば、実施されてきています。
②は、明治初期には、実施されました。

この2つの方法は、過剰になると、インフレが、過熱してしまいます。

①は、天皇在位記念や、五輪記念などでの記念事業で、実施されました。
②は、明治時代にインフレ過熱が起きて、以降は、ストップしていました※

(※戦争による金属不足などの特殊環境下では、少額の政府紙幣は、大正・昭和でも存在)

②でも、制度整備したうえで、やろうと思えば、できるのです。
人類の過去の歴史で、②は、しばしば実施されています。シンガポールは、今でもやってます。

「通貨の新規生産」においても、文字通り、お金が増えるので、副作用は、インフレ発生です。


インフレの原因は? 「カネ >モノ」 だと、インフレへ
マネーサプライ(通貨の供給量)が増加すると、「 カネ>モノ」 になり、物価が上昇します。

例えば、、、

八百屋さんが、「1個 100円 の ミカン」を、10個売っている、とします。
近所の10人が、100円で1個づつ、買うとします。

カネの量> モノの量 」 のケースでは?

世の中のお金が増えたケースでは、どうでしょうか?

近所の人が裕福になったことを、八百屋さんは知りました。
そこで、ミカン1個を、120円に値上げしましたが、買い手が裕福になったので、売れました。

 → カネが増えると、物価上昇(インフレ)になります。


カネの量< モノの量 」 のケースでは?

逆に、近所のお客さんが、不景気で、お金が減ったら、どうでしょう?。

いつも通りの100円では、お客さんのお財布が寂しいので、売れ行きが、良くありません。
時間がたつとミカンは腐るので、八百屋さんは、早く売りたくて、1個80円に値下げします。

 → カネが減ると、物価下落(デフレ)になります。


「 カネの量 >モノの量」 のケースでは?

不作で、入荷が減ってしまい、5個しか、在庫がありません。
5個×100円=500円の売り上げでは、八百屋さんは、生活できません。
なので、八百屋さんは、値上げを試みます。

逆に、買い手側の立場では、どうでしょうか?
近所の人は、数が少ないと、売り切れてしまう、と警戒し、高値でも買う人は、います。

 → モノが減ると、物価上昇(インフレ)になります。


「 カネの量 <モノの量」 のケースでは?

逆に豊作で、20個が入荷し、在庫があります。

時間がたつとミカンは腐るので、八百屋さんは、早く売りたくて、1個50円に値下げしました。
そうしたら、いつも通り1000円の売り上げは維持できました。(50円×10人×2個=1000円)

 → モノが増えると、物価下落(デフレ)になります。

こうして「カネの量」「モノの量」の天秤のバランスで、物価の上昇・下落が、決まります。

国の借金増加は、問題ない。 しかしデメリットは、無いのか?
 ~結論は、デメリットは、ありえます。「インフレという副作用」です~

例えとして、災害が起きた場合の、復興工事のケースで、解説してみます。
復興工事の財源は、通常は、「増税」「借金増加」(国債増発)です。
ここでは、要約編よりも、詳しく解説します。


◆「増税型」なら?

「増税」なら、例えば、政府が、1兆円を民間から吸い取って、その1兆円で、復興工事を発注します。
そこまででの、日本全体でのお金の量は、大枠では変わりません。

  1兆円が、民間(納税)政府(発注)民間 へと戻るとは?

①民間が、1兆円を、政府に対して、税金として渡します。

 これで民間のお財布は、マイナス1兆円で、政府のお財布は、プラス1兆円になります。

②その後、政府は、その1兆円を、民間業者へ支払って、工事を発注します。

 民間は、納税でマイナス1兆円になったが、工事受注でプラス1兆円で、合計±ゼロです。

 政府は、税金でプラス1兆円になったが、工事支払でマイナス1兆円で、合計±ゼロです。

こうして、最終的には、民間は±ゼロで、政府も±ゼロです。

1兆円が、民間(納税)政府(発注)民間 へ、と戻ってくるからです。


◆「借金型」なら?

一方、「借金」(国債発行)による調達なら、民間は、お金(又は資産)が減るタイミングは、無いです。
そして、最終的に、民間には、1兆円が増えます。

①民間が、国債を買い、購入代金1兆円を、政府に対して、渡します(民間が政府に、1兆円を貸した)

 民間のお財布は、マイナス1兆円で、政府のお財布は、プラス1兆円になります。
 しかし民間は、別途、1兆円の国債という金融商品を保有中です。
 
②その後、政府は、その借りた1兆円を、民間業者へ支払って、工事を発注します。

 民間は、国債購入でマイナス1兆円になったが、工事受注でプラス1兆円で、合計±ゼロです。

 政府は、国債の販売で +1兆円になったが、工事支払で -1兆円で、合計±ゼロです。

③民間は、保有中の1兆円の国債を、日銀に売却し、1兆円を手に入れます。
 さっきまで、民間は、合計±ゼロだったのが、この売却で+1兆円となります。
 
④最終的には
 民間は、1兆円の現金を、獲得しました。
 日銀は、1兆円の国債を、保有中です。
 政府は、現金はプラスマイナス・ゼロですが、日銀に1兆円の借金返済の義務が継続中です。

1兆円が、民間 → (国債購入=貸し付け) → 政府 → (発注) → 民間 へ、と戻ります。
これとは別に、日銀→ (国債購入)→ 民間 へと、民間に1兆円が、戻ります。

よって「増税型」より「借金型」の方が、世の中に出回るおカネが、1兆円多くなります。
すると「カネの量>モノの量」へ傾きます。すると、物価は上昇し、経済は、インフレへ傾きます。


借金の上限は? | どこまで 借金を増やして 大丈夫なのか?
では、どこまで、借金を増やして、大丈夫でしょうか?
借金増加の副作用(デメリット)は、「インフレ」です。

借金増加で、世の中のお金が増えると、前述のミカンの「カネの量>モノの量」のケースです。
お金が増えると、物価上昇(インフレ)になります。

日本は、CPIがマイナスの年もあり、デフレ脱却が未完なので、インフレは、逆に好都合です。
デフレ脱却と言えるインフレ率は、2%です。日銀も、物価安定の目標を、2%としています。

しかし、日本のインフレ率※は、
下記アベノミクス7年の単純平均では、プラス 0.4%しかありません。

 2013年 0.4%、2014年 -0.3%、2015年 0.8%、2016年 -0.1%、2017年 0.5%
 2018年 0.9%、2019年 0.5%

 ※ここでのインフレ率は「CPI(総合)の前年同期比」
 ※日銀は「コアCPI」を、政府は「コアコアCPI」を、指標としているが、本稿では「総合CPI」で見る。

少なくとも、CPIが2%になるまでは、借金が増加しても、okです。

また、2%を超えてはいけない、というわけでも、ありません。
インフレが更に進行し、悪い副作用が起きた際は、マクロ政策で、物価を冷却すればよいのです。

物価冷却とは、市中のカネを減らす量的引き締めや、金利引き上げ、増税等です。
インフレが過剰になっても、それらでコントロールするから、心配しなくても大丈夫なのです。


国の借金増加、または、通貨創造で、経済成長とデフレ脱却

こうして国の借金増加などで、経済対策の予算が増え、景気下支えや、景気刺激策になります。
また、日本を長年悩ませたデフレの脱却にもなるのです。良いことづくめです。


政府はアクセル、中央銀行はブレーキ。 その理由とは ?
政府は、アクセルを踏む

政治の世界では、景気が悪化すると、政権の支持率が、下がる傾向にあります。
よって、政府は、経済政策では、熱を加える側にいます。

具体的には、GDP・株価・求人倍率・賃金を上昇させるために、財政出動や金融緩和をします。
しかし、アクセルを踏みすぎて、景気が過熱しすぎると、副作用としてインフレが加速します。

世界の歴史で、インフレ過熱は、人が風邪で発熱すると同じように、度々発生してきました。
また、インフレの事例としては、戦争があります。

世界の歴史でも、戦争の戦費調達や賠償金支払の資金として「政府紙幣」が発行されています。
戦争由来のインフレは、程度が大きく「ハイパーインフレ」に、なることがあります。

近代日本では、明治維新の後は、中央銀行がなく、政府が、紙幣を直接発行していました。
明治10年に西南戦争が勃発しました。戦費調達のために、政府紙幣を大量発行しました。

それにより、強いインフレが、発生しました。
そこで松方正義は、明治14年に、中央銀行を設立し、翌年、日銀が業務を開始しました。

世界各国は、政府が紙幣を発行しインフレになった歴史を学び、独立の中央銀行を設けました。


中央銀行は、ブレーキ役

アクセルを踏む政府に対して、中央銀行はブレーキ役です。

中央銀行の第1の目的は「物価の安定」です。物価過熱や悪性インフレを、起こさないことです。
ちなみに、ちょうど良い適温のインフレの率は、2%とされます。日米とも、2%としてます。


MMTや、MMT的政策を、実施しない理由 とは ?
米国の中央銀行(FRB)のパウエル議長や、日銀の黒田総裁は、MMTに対し、否定的な立場です。

政府が、経済政策でアクセルを踏んでも、中央銀行は、ブレーキ役で、反インフレ姿勢です。
インフレ・リスクがある政策の肯定は、中央銀行は、できない立場にいるのです。

また、経済学は、自然科学とは違います。自然科学では実験ができます。
経済学では、実験するのは、ハードルが高いです。

つまり、経済学は、経験則(歴史)の事例から、検証するのが第一のアプローチです。
しかし小規模の地域に限定して、経済政策の実験を行うという選択肢は、ありえるでしょう。

例えば「ベーシックインカム」は、メリット・デメリットがあり、長年、議論がされました。
机上の議論を続けても、結論が出ないので、ドイツやフィンランドは実験に踏み切りました。


さて、MMT(MMT的を含む)については、実際に実施しても、コントロールは可能でしょう。
しかし、守旧派の中央銀行は、万一、大事になったらどうする!と考え、踏み込めないのです。

中央銀行は、立場上は、ブレーキ役なので、そうなるのです。


「MMT」や「MMT的な理論」に躊躇は、不要
20世紀までは、大規模な戦争では、巨額のカネ(戦費や賠償金)が動きました。
それにより、悪性のハイパーインフレが、発生したことがありました。

なお、ハイパーインフレとは、物価が1年間で130倍(インフレ率13000%)以上とされます。

18世紀では、フランス革命の後に、ハイパーインフレ
19世紀では、南北戦争の後に、アメリカで、ハイパーインフレ
20世紀では、第一次世界大戦の後に、敗戦後のドイツ帝国で、ハイパーインフレ

21世紀では、ベネズエラやジンバブエと、途上国で発生しましたが、先進国では発生してません。
この2つの途上国も、かなり特殊な政治や環境であり、例外と捉えてもいいくらいでしょう。

こうして、先進国では、巨額の戦費調達が原因のハイパーインフレが、多いのです。
しかし、21世紀の先進国は、巨額のカネが動く大規模戦争に、なっている訳では、ありません。


また、近年では、コンピューターやネットで、各種の指数やデータは、素早く把握できます。
21世紀の水準では、インフレ率は、観測可能で、制御も可能です。

「100円のミカンが、いつのまにか、1万円になっていた! 気付かなかった!」
 → こんなことは、無いのです。

【筆者プロフィール】
松田優幸が登壇のセミナーの様子
【松田 優幸 (消費者経済総研 チーフ・コンサルタント) 経歴】

1986年 私立 武蔵高校 卒業

1991年 慶応大学 経済学部 卒業
     経済学部4年間で、
      ・マクロ経済学(GDP・失業率・インフレーション・投資・貿易収支等)
      ・ミクロ経済学(家計・消費者、企業・生産者、取引市場等)・労働経済学を専攻

     経済学科 高山研究室 にて、
      ・貿易経済学・環境経済学を研究

1991年~東急不動産(株)、東急(株)、(株)リテール エステートで勤務

この間では、
 消費経済の最前線の現場である、店舗・商業施設などを担当し、
 各種施設の、企画開発・運営、接客等で、消費の現場の最前線に立つ。 
 また、全国の消費経済の現場を、視察・調査し、その数は多岐にわたる。

また、25年間の間「個人投資家」として活動中。
投資家として、マクロ経済(金利、GDP、物価、貿易、為替など)の分析や、
ミクロ経済(企業動向、決算、市場など)の分析にも、注力している。

*近年は、
 消費・経済・商業・店舗・ヒットトレンド等で、番組出演、執筆・寄稿、セミナー・講演等で活躍

*現 在は、
 消費者経済総研 チーフ・コンサルタント (53歳)
 兼、株式会社 リテール エステート リテール事業部長

*資格は、
 ・ファイナンシャル・プランナー他


【消費者経済総研について】

■研究所概要
名称  : 消費者経済総研
所在地 : 東京都新宿区新宿6-29-20
事業内容: 消費・商業・経済の調査・分析・予測のシンクタンク
ご案内・ご注意事項 
*消費者経済総研のサイト内の情報の無断転載は禁止です。

*NET上へ引用掲載する場合は、
  ①出典明記 ②部分引用に限る ③当総研サイトページにリンクを貼る。 
  以上の①②③を同時に満たす場合は、連絡なく、一部転載・引用ができます。

*テレビ局等のメディアの方がたは、取材対応での情報提供となりますので、ご連絡下さい。

*本サイト内の情報は、正確性、完全性、有効性等は、保証されません。本サイトの情報に基づき損害が生じても、当方は一切の責任を負いませんので、あらかじめご承知おきください。
 
取材等のご依頼 ご連絡お待ちしています
メール: toiawase★s-souken.jp(★をアットマークに変えて下さい)

電 話: 03-3462-7997 (離席中が続く場合は、メール活用願います) 
         
チーフ・コンサルタント 松田優幸   経歴のページはこちら